天狼

         

きょう、特別な植物が開花しました。




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これです。なんだかわかりますか?




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            Pediocactus sileri SB473 first flower at 17years from seed, own root.



天狼。学名はペディオカクタス・サイレリ(Pediocactus sileri SB473 Mohave Co. Arizona, USA)。
植物の和名は、あまり好きじゃない方ですが、この名前だけはしっくりくる。
天駈ける狼。恐ろしくプライドが高くて、栽培者に決して心を許してくれない野生的な植物です。
育てにくさでいえば、数千種を数えるサボテン科植物のなかでも随一でしょう。




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その天狼。きょう、種から育てた株が初めて開花しました。
正確には、接ぎ木した株や、接ぎ木を経て実根にした株は幾度か咲いたことがあるのですが、
この株は、実生して以来、本体の根だけで育ててきたもので、そういう意味で初開花です。

蒔いたのは前の世紀の終わり頃。私もまだ青年でした。そこから二十年近く育てて、直径8cm。
新刺が出たぶん、下の方が縮んで小さくなるので、ここ5年くらいは大きさ変わっていません。
黒く長い刺を反りかえらせる豪壮な個体で、とっくに開花サイズになっているはずですが、
毎年、春になっても蕾が出てこなくって、新しい刺座がみっつくらい増えて、それでおしまい。
もう、東京の空の下では咲かないものだと思っていました。




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ちょっとくすんだ黄色花。花弁はとてもうすく、フリンジがあります。ここはエスコバリアと
似ている。花糸も花柱も同色なので落ち着いた印象です。顔を近づけても、香りはとくに感じない。
ことしは3月中旬に最初の水やりをした後に、刺より先に小さな蕾が顔をのぞかせてきました。
そのあと、アメ色の新刺が伸びてきて、蕾は収縮してしまうかな、と思っていましたが、
このところ暖かい日が続くうち、一気に膨らんで開花に至りました。
なぜ、ことしに限って咲いたのかはわからない。同じ年の株、さらに古い株と、私のところには
3個体あるのですが、咲いたのはこれだけなので、残念ながら種をとることは出来ません。




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これまで、自生地の様子もふくめて、ホームページやこのブログでも取り上げてきましたが、
自生地は寒暖の差が激しく、雨量はごく少ないところ。メキシコのように色々なサボテンが
あちこちに生えているような場所ではなく、そもそも生物の密度がとても低い不毛の場所です。
この株は、温室の特等席に陣取って、水やりも年3回だけ。でもめちゃめちゃ大切にしています。

天狼は、かつてユタヒア属(Syn:Utahia sileriという独立した属に分類されていましたが、
後にペディオカクタスに編入され、最近ではスクレロカクタス属(Syn:Sclerocactus sileri)に
統合する考え方も出てきています。分類が定まらないのは、ほかのどの種とも似ているようで
似ていないということで、それだけ特異な種と言うこと。自生地でも稀少になっているため、
保護植物になっています。この種をうまく育てて、採種まで出来る凄腕栽培家は、MesaGardenの
Steven Brack氏くらいだったので、彼が引退した今後は種の入手も難しくなると思われます。




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この春、私の栽培場でいちばん印象的な開花。写真の枚数が多くなってしまいました^^;。
いや、ほんと嬉しかったですね。
















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ジャンル : 趣味・実用

【速報】ワシントン条約 付属書Ⅰにサボテン追加

      
今回はサボテンや多肉、特に輸入植物を購入したり栽培する人はぜひ理解しておきたい「ワシントン条約」について。
自分の育てている植物の大切さを知る上でも、是非読んでみてください。
今年9月~10月に南アフリカ・ヨハネスブルグで第17回ワシントン条約締約国会議(CITES COP17)開催されました。
象牙の国内市場閉鎖を求める決議や、ウナギの資源保護(調査実施)を求める決定などが報じられていますが、
植物界では、私にとって大変なじみ深い植物であるスクレロカクタス(Sclerocactus)の3種が附属書Ⅱから附属書Ⅰへ
移行されました。狭義のスクレロカクタスについては、月想曲(Sclerocactus mesae-verdae)や
プビスピナス(S. pubispinus)等とともに、新たに3種が最も厳格に国際取引が規制される植物になった訳です。
また、多肉植物関連では、トックリランの仲間(Beaucarnea spp.)すべてが、付属書Ⅱに掲載されました。

ワシントン条約の「付属書」というのは、絶滅の危険性に応じた取引規制のカテゴリー(ランク)で、ⅠがⅡより厳しい。
その内容はというと、
▼「付属書Ⅰ」は、商取引で絶滅のおそれのある種で、学術研究を目的とした取引以外は禁止。
▼「付属書Ⅱ」も取引を規制しなければ絶滅のおそれのあるもので、取引には輸出国政府の発行する許可書等が必要。
今回のCOP17で「付属書Ⅱ」から「付属書Ⅰ」に格上げされたスクレロカクタスは、以下の3種です。
現状野生株の取引は行われていないと思われますが、たとえ数本、数十本レベルの採取でも致命的なダメージになると
想定しての規制と言えるでしょう。




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              Sclerocactus cloveriae in habitat Sanjuan co. NM
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              Sclerocactus cloveriae HK1002 (grown from seed) CITES AppendixⅡ→Ⅰ



①スクレロカクタス・クロベリアエ(Sclerocactus cloveriae)。
これまでの分類では、彩虹山(S.parviflorus)のなかに包含されたり、白虹(S.whipplei)の亜種とされたり、
見解が定まっていないところもある種ですが、いずれにせよ、上記2種とは異なる特徴をもち、コロニーも
隔絶され、なおかつ狭い範囲で個体数も少ないことから、付属書Ⅰに入れ込まれることになったと思われます。
この中にはニューメキシコ州のごく狭い範囲に分布するごく小型のタイプ、ブラッキー(S.cloveriae 'brackii')も
含まれています。メサガーデンの園主、ブラック氏の名を頂いたこのドワーフフォームは、小さいうちから
濃ピンク色の花を咲かせるとても観賞植物の高い植物です。




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              Sclerocactus sileri=S.whipplei ssp.busekii in habitat Coconino co. AZ  
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             Sclerocactus sileri=S.whipplei ssp.busekii SB 1086 (grown from seed) CITES AppendixⅡ→Ⅰ



②スクレロカクタス・シレリ(Sclerocactus sileri=S.whipplei ssp.busekii)。
この種については、栽培されている方もほとんどいない、幻のサボテンと呼んでいいものだと思います。
自生地を訪ねましたが、アリゾナ北部の赤い岩山の麓に少数のコロニーが点在するたけで、個体数はごく僅か。
そもそも数が決定的に少ないですから、デフォルトで絶滅危惧種です。アメ色の刺が密生し、ほんのりベージュがかった
白い花は漏斗状に咲き、とても気品があります。
以前は、メサガーデンが種子を販売していたため、数本の実生苗を所有していますが、まだ自家採種には至りません。
今後は入ってこないでしょうから、種の保全という意味でも栽培責任は重大に思えてきます。




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              Sclerocactus spinosior ssp.blainei in habitat Nye co. NV
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             Sclerocactus spinosior ssp.blainei SB1015 (grown from seed) CITES AppendixⅡ→Ⅰ



③スクレロカクタス・黒虹山ブライネイ(Sclerocactus spinosior ssp.blainei=S.spinosior ssp.schleseri)。
このブログでも幾度も取り上げてきた、たいへん魅力的なスクレロです。こちらも小さいなコロニーが3か所
知られているだけで、野生の個体数は極めて少ない。私が過去何度も訪ねている産地は、最後の訪問時には
1本も見当たりませんでした。おそらく採集によるものと推察され、とても残念な思いをしました。
こちらもメサガーデンなどから種子が販売されており、スクレロとしては栽培・開花も容易なことから、
繁殖個体が相当数出回っていると思われます。黒白の虹、という和名を頂いていますが、その名のとおり、
黒白のリボン状の刺が乱舞し、透明感ある桃色花を咲かせる姿には、難物マニアならずとも魅了されるでしょう。
以上、自生地の写真、栽培株の写真ともに筆者が撮影したものです。




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                  Discocactus spp. (grown from seed) CITES AppendixⅠ




ちなみに、既に付属書Ⅰに記載されているサボテンとしては、牡丹類の全種、花籠、菊水、兜、白斜子、帝冠、精巧丸、
ツルビニやディスコカクタス、ユーベルマニアの全種、エスコバリアのレーイ(スニーディ)、ミニマ(ネリー)など。
難物サボテンでは、月想曲やプビスピナ、月の童子、飛鳥・斑鳩、天狼も付属書Ⅰです。




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                 Aloe polyphylla  (grown from seed) CITES AppendixⅠ
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                 Pachypodium ambongense (grown from seed) CITES AppendixⅠ




一方、サボテンだけでなく、多肉植物も多くがワシントン条約の規制の対象になっています。
アロエ属は数多くの種が付属書Ⅰ、全種が付属書Ⅱに記載されています。パキポディウムも全種が付属書Ⅱに記載、
バロニー、アンボンゲンセなどはⅠです。ほかにも塊茎植物フォーキエリア・ファスキクラータやプルプシーは付属書Ⅰ。
ユーフォルビアも多くの種が付属書Ⅰに記載されています。ソテツ類はみなCITESの対象で、人気のエンセ(鬼ソテツ)は
すべて付属書Ⅰです。現在取引されているのはみな人工繁殖品ですが、規制以前に多くの種が過剰採取や産地破壊で
絶滅、ないし絶滅寸前に追い込まれています。
最近たくさん輸入されている、パキポディウム・グラキリスや、オペルクリカリア・パキプスなどは付属書Ⅱになります。
つまり輸入されてきている個体は原則許可書がついているわけで、原産地国政府が、これくらいなら大丈夫と認定して
採取している建前です。ただ、これまでの例でいうと、ワシントン条約の付属書Ⅰに引き上げられる頃には、既に絶滅が
不可避なほど個体数が激減してしまっている例も多くあります。




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                Sclerocactus cloveriae 'brackii' in habitat, SanJuan co.NM




私は、野生植物の採取をすべて否定するつもりはありません。そもそも、すべての園芸植物の元親は自生地で採取された
野生個体です。私自身、原産地株を輸入したこともあり、今も育てています。荒木には国内繁殖苗にはない独特の風格があり、
ゴツゴツと乾いて到着したものを工夫して発根させ、日本の環境に慣らし育てていくことで、植物をより良く知ることもできます。
また、ワシントン条約におけるCITESの記載は、必ずしも実際の生物の絶滅リスクと必ずしも照応しておらず、かえって
価格高騰による採集圧の増大を招いているとの指摘もあります。さらに取引規制の面では、人工繁殖品までも必要以上の
手続きを求めるなど、改善すべき点も多々あります。
一方で、自分の愛する植物が自生地で根絶やしになるような事態は悲しすぎますし、そうまでして採取はしてほしくない。
そうした意味で、ワシントン条約のような規制も必要なのかな、と思います。と同時に、仮にルールに則った輸入であっても、
あきらかに産地破壊的な過剰採取と思われる場合には、それを回避するためにどう行動すべきか考えたいと思っています。

ところで、今回不思議だったのは、COP17の開会直前になって、いったい何が記載されるのか?記載されたら買えないぞ、
みたいなセールストークが飛び交っていたことです。実際は、会議がはじまる前の段階で、新規記載や昇格の対象種案は
あらかた絞り込まれ、公表されていました。サボテンや多肉植物の検討対象はスクレロやトックリラン、チランジアくらいで、
パキポやオペルなどはそもそも議題になっていませんでした。
もっとも、昨今のハイペースで大量の採取・輸入が続けば、規制される頃には時すでに遅しという可能性も否定できません。
なんにせよ、いま皆さんのお手元にある植物は、是非とも大切に育てて、できれば種をとって次代に繋げて戴ければ・・・と、
お節介ながら申し上げる次第です


☆参考)ワシントン条約付属書・植物 (2016年5月現在 COP17での改定は来年初頭に反映される見通し)











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新刺コレクション。

     
この週末も関東は天候に恵まれました。
温室の大物コーデックスを幾鉢か、十年ぶりくらいに植えかえたら、腰が痛くなってしまった。
難物サボテンたちには、ことし2度目の水やり。これ今季の水やりはおしまい。運が良ければ秋にもう一回。
辛すぎるようですが、春先の一度の灌水だけで元気な株は新刺を伸ばして春を謳歌しています。




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                      Sclerocactus whipplei SB472
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                      Sclerocactus polyancistrus SB1773
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                      S.spinosior ssp.blainei 'Schleseri' SB1015




この季節のスクレロはほんとうに綺麗。
短い期間に急速に成長するので、鮮やかな色の刺が束になって出てきます。
ふだんは渋い味わいの白虹(Sclerocactus whipplei SB472)も、ごらんのとおり。
白紅山(Sclerocactus polyancistrus SB1773)は紅白のカギ刺がからみあって禍々しいほどの美しさ。
黒白の長い刺が乱舞する黒虹山ブライネイ(S.spinosior ssp.blainei'Schleseri' SB1015)も、
新刺の色合いが加わっていっそう鮮やかに見えます。
この季節は、痛んだ株が倒れる時期でもあります。秋から冬にかけて根が致命的に傷んだ株は
春の灌水で膨らむと同時に、腐りも進行して歪んだり変色したりしてダメになる。
きょうは泣く泣く5、6鉢を片づけました。




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                     Echinocactus polycephalus Las Vegas NV
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                E.xeranthemoides ''from golden spine plants MarbleCanyon AZ              




大竜冠(Echinocactus polycephalus Las Vegas NV)も、ごつい新刺を伸ばしています。
毎年こうして刺座が増えているはずなのに、大きくならぬ。いちばん古い実生が二十年でげんこつサイズ。
これでも5~6年くらい経っているんじゃないかと思います。でもことしは調子が良さそう。
竜女冠(E.xeranthemoides MarbleCanyon)の実生は、山で黄色い刺の個体から種を得たものです。
山では純黄色の個体は1割くらいですが、実生苗の黄刺出現率は3割程度でした。
ちなみに赤刺個体の実生からは1割くらいしか黄色い刺は出ません。大竜冠よりずっと育てやすい植物ですが、
それでも待ちきれず実生接ぎしてブーストかけたのが、下の写真の株です。新刺も混じり気のない純黄色で美しい。




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                         Ferocactus johnstonianus
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                        Ferocactus lindsayi SB 535
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                        Echinomastus acunensis CR137
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                         Echinomastus johnsonii KY9802 Mohave co.AZ
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                         E.johnsonii lutescens Meadview




つづいては黄刺つながりで、フェロ・ジョンストン玉(Ferocactus johnstonianus)の新刺。
チェコ人が島で採ってきた種の実生で、2本だけ生えたもの。この種も黄刺といいつつ赤が混じるものが多く、
純粋な黄刺は珍しいようです。この株も微妙に赤が混じっているけれど、それはそれで綺麗ですね。
同じフェロでいちばん渋い味わいのリンゼイ(Ferocactus lindsayi SB 535)は新刺もたまらなく渋い。
エキノマスタス・アキュネンシス(Echinomastus acunensis CR137)もドバっと刺が出てきます。
近縁種の紅簾玉(E.erectocentrus)はとてもご機嫌がとりにくい木ですが、こちらは気のいいサボテン。
この英冠(Echinomastus johnsonii KY9802 Mohave co.AZ)は実生5年くらいの若苗で刺の紅いタイプです。
黄花英冠(E.johnsonii lutescens Meadview)はこうしてみると前二者の中間的な植物のように見えますね。




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                     Sclerocactus glaucus ' wetlandicus' SB1873 Duchesne Co,UT




最後の一枚は、ウェットランディクス(Sclerocactus glaucus ' wetlandicus' SB1873 Duchesne Co,UT)の古木。
いまは、メサガーデンのリストでもグラウカスに統一されましたが、ユタ州の離れた場所に分布しています。
実生同期の大半は丈が伸びて形崩れしてしまったのに、この個体はうまい具合に下部が収縮して姿を保っています。
グラウカスの仲間の新刺は、スクレロのなかでいちばん控えめ。ほんのり紅に色づく感じがなんとも言えない。

さて、この美しい季節は、駆け足で過ぎてしまいます。あとは梅雨をスキップして暑い夏になればいいのに。











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