2012年05月12日 21:00
という和名のサボテンがあります。誰が名づけたのか、知りません。
凡、家来、ですよ。凡人、凡夫、凡庸、凡退・・・とりたてて目立つところのなく平凡な、しかも主ではなく家来。
なんでこんな名前になってしまったかと言えば、おそらくはその学名、
Echinocereus fasciculatus ssp.bonkerae から来ていると思われる。
ボンケラエ→凡家来、ってことなんでしょうねぇ、たぶん。学名あて字の和名は珍しくないですが、
これほど安直かつ愛情に乏しい名づけは珍しい。その名の由来、Bonkerさんも、びっくりでしょう。
子ども時代、何かのサボ本に紹介されているのを見て何とも変な名前の植物だなぁと思い、以来気になっていました。
そして、これがそのお姿。

え?どれかわからないって?
画面左下に写り込んでる、小さくてこんもりしたサボテンです。この場合は、オプンチアの家来に見えますね。
どうせ家来になるなら、金鯱とか、立派な弁慶柱あたりに仕えたかったでしょうが、仕方ない。

こっちは、もさもさのユッカに付き随う凡家来。それでも、主に比べるとじつに控えめですな。
過去のアルバムを探しても、意外にアップで撮っている写真が少なくって、何かほかの植物の脇に
ちんまり映っているのばっかりなんです。いやー凡家来には実に申し訳ないかぎり。
でも、よく探したら、ちゃんと大きく映ってる写真もありました。さっそく見てみましょう。

Echinocereus 'bonkerae' in habitat (near Globe,AZ)
どうです、たしかに平々凡々たる家来でしょう。蝦サボ以上でも以下でもないボディに、中刺の目立たない控えめな姿。
でも、沙漠旅幾星霜のメサガーデンの園主は「エキノセレウスの中でもとくに素晴らしい植物だ!」と一押しでした。
どこに魅力があるのか。なんというか、藤沢周平の小説に出てくるような、地味でうだつがあがらないけれど、
密かに剣の達人だったりする侍みたいなペーソスがあります。気配を消してじっと沙漠に蹲るその姿を見つめていると、
黙る力、みたいなものを感じる。・・・かなり強引な売り込みだけど、育ててみたらきっとわかりますよ。
典型的な蝦サボゆえ、丈夫で成長も早く小苗のうちから子吹きし群生します。種から開花株の育成も容易で、
栽培しやすさも花の派手さも麗晃丸といい勝負。麗晃丸はけっこう人気がありそうだけど、凡家来を育てている人が
日本に何人いるんだろう?・・・え?私だけ?

The scenery in southern Arizona
その自生地はこんなアリゾナの峡谷地帯。疎らに木々が茂る標高1000mくらい。冬寒く夏暑い感じの場所。
谷の崖面には鯱頭イーストウッディ(Ferocactus cylindraceus ssp.eastwoodiae)が取り縋っており、
凡家来は緩やかな斜面に生えています。周辺地域には同じ様な顔の蝦サボがいろいろ生えていてややこしい。
最近の分類ではファスキクラツス(E.fasciculatus)の亜種という扱いが定番となっているようですが、
衛美玉(E.fendleri)や武勇丸(E.engelmannii)の亜種とされていることもあり、New Cactus Lexiconでは、
ボンケラエ(E.bonkerae)として、暫定独立種扱いとなっています。同じ属の御旗(E.dasyacanthus)と似て、
中刺がない個体が多いため、それが特徴のように言われますが、同じコロニーにこんな株もあります。

Echinocereus 'bonkerae' with central spine, same location as above one (near Globe,AZ)
ほとんどfasciculatusに近い顔ですが、隣り合って生えている。そういう意味では両者は個体差の範囲、という気が
しないでもない。刺がつん、と突きだしていて、それなりに勇ましい。そういう意味では、凡家来、らしくない。
やっぱり中刺の出ない、静かで物言わぬ顔つきのほうがしっくりきます。
この、地味で取り柄のない、どんなに良作の株を品評会に出しても誰の記憶にも残りそうにないサボテンが、
一瞬の輝きを放つ瞬間があります。そう、開花のときです。

Echinocereus 'bonkerae' with flower in habitat (near Globe,AZ)

Echinocereus 'bonkerae' SB521 Gila Co,AZ (cultivated)
すべての蝦サボテン、いや全サボテンのなかでも最もゴージャスと言っていい、素晴らしい花。
花径10cmほどもある大輪で、濃い紫ピンクの花弁には、なんとも言えない金属光沢があり、視覚を撃ちます。
上の一葉は、冒頭紹介した自生地でようやくに花に出会えたときの写真。下2葉はメサ由来の栽培株。
両者の花いろは微妙に違うので、メサのSB521は、私の訪ねた自生地とは違う場所のものと思われます。
悔しいがメサの株のほうが綺麗だ。園主はこっちのコロニーを指して「とくに素晴らしい」と述べたに違いない。
花の中心に向けてケミカルなグリーンに移り変わっていくグラデ感、柱頭とのコントラストも鮮やか過ぎる・・・。
ともかく、写真では伝えきれないくらい派手さで、これが人の手による改良を経ていない野生植物の花か、と。
そうか、刺姿がジミジミだったのは、この美しい花を際立たせるためだったのか、と得心します。
ほら、こうして並みいる美花蝦サボ軍団と比べてみても、ひときわ目もあやな美しい花です。

凡家来。初夏の陽射しを浴びて、きょうばかりはと主に面目を施す、の図ですね。
凡、家来、ですよ。凡人、凡夫、凡庸、凡退・・・とりたてて目立つところのなく平凡な、しかも主ではなく家来。
なんでこんな名前になってしまったかと言えば、おそらくはその学名、
Echinocereus fasciculatus ssp.bonkerae から来ていると思われる。
ボンケラエ→凡家来、ってことなんでしょうねぇ、たぶん。学名あて字の和名は珍しくないですが、
これほど安直かつ愛情に乏しい名づけは珍しい。その名の由来、Bonkerさんも、びっくりでしょう。
子ども時代、何かのサボ本に紹介されているのを見て何とも変な名前の植物だなぁと思い、以来気になっていました。
そして、これがそのお姿。

え?どれかわからないって?
画面左下に写り込んでる、小さくてこんもりしたサボテンです。この場合は、オプンチアの家来に見えますね。
どうせ家来になるなら、金鯱とか、立派な弁慶柱あたりに仕えたかったでしょうが、仕方ない。

こっちは、もさもさのユッカに付き随う凡家来。それでも、主に比べるとじつに控えめですな。
過去のアルバムを探しても、意外にアップで撮っている写真が少なくって、何かほかの植物の脇に
ちんまり映っているのばっかりなんです。いやー凡家来には実に申し訳ないかぎり。
でも、よく探したら、ちゃんと大きく映ってる写真もありました。さっそく見てみましょう。

Echinocereus 'bonkerae' in habitat (near Globe,AZ)
どうです、たしかに平々凡々たる家来でしょう。蝦サボ以上でも以下でもないボディに、中刺の目立たない控えめな姿。
でも、沙漠旅幾星霜のメサガーデンの園主は「エキノセレウスの中でもとくに素晴らしい植物だ!」と一押しでした。
どこに魅力があるのか。なんというか、藤沢周平の小説に出てくるような、地味でうだつがあがらないけれど、
密かに剣の達人だったりする侍みたいなペーソスがあります。気配を消してじっと沙漠に蹲るその姿を見つめていると、
黙る力、みたいなものを感じる。・・・かなり強引な売り込みだけど、育ててみたらきっとわかりますよ。
典型的な蝦サボゆえ、丈夫で成長も早く小苗のうちから子吹きし群生します。種から開花株の育成も容易で、
栽培しやすさも花の派手さも麗晃丸といい勝負。麗晃丸はけっこう人気がありそうだけど、凡家来を育てている人が
日本に何人いるんだろう?・・・え?私だけ?

The scenery in southern Arizona
その自生地はこんなアリゾナの峡谷地帯。疎らに木々が茂る標高1000mくらい。冬寒く夏暑い感じの場所。
谷の崖面には鯱頭イーストウッディ(Ferocactus cylindraceus ssp.eastwoodiae)が取り縋っており、
凡家来は緩やかな斜面に生えています。周辺地域には同じ様な顔の蝦サボがいろいろ生えていてややこしい。
最近の分類ではファスキクラツス(E.fasciculatus)の亜種という扱いが定番となっているようですが、
衛美玉(E.fendleri)や武勇丸(E.engelmannii)の亜種とされていることもあり、New Cactus Lexiconでは、
ボンケラエ(E.bonkerae)として、暫定独立種扱いとなっています。同じ属の御旗(E.dasyacanthus)と似て、
中刺がない個体が多いため、それが特徴のように言われますが、同じコロニーにこんな株もあります。

Echinocereus 'bonkerae' with central spine, same location as above one (near Globe,AZ)
ほとんどfasciculatusに近い顔ですが、隣り合って生えている。そういう意味では両者は個体差の範囲、という気が
しないでもない。刺がつん、と突きだしていて、それなりに勇ましい。そういう意味では、凡家来、らしくない。
やっぱり中刺の出ない、静かで物言わぬ顔つきのほうがしっくりきます。
この、地味で取り柄のない、どんなに良作の株を品評会に出しても誰の記憶にも残りそうにないサボテンが、
一瞬の輝きを放つ瞬間があります。そう、開花のときです。

Echinocereus 'bonkerae' with flower in habitat (near Globe,AZ)


Echinocereus 'bonkerae' SB521 Gila Co,AZ (cultivated)
すべての蝦サボテン、いや全サボテンのなかでも最もゴージャスと言っていい、素晴らしい花。
花径10cmほどもある大輪で、濃い紫ピンクの花弁には、なんとも言えない金属光沢があり、視覚を撃ちます。
上の一葉は、冒頭紹介した自生地でようやくに花に出会えたときの写真。下2葉はメサ由来の栽培株。
両者の花いろは微妙に違うので、メサのSB521は、私の訪ねた自生地とは違う場所のものと思われます。
悔しいがメサの株のほうが綺麗だ。園主はこっちのコロニーを指して「とくに素晴らしい」と述べたに違いない。
花の中心に向けてケミカルなグリーンに移り変わっていくグラデ感、柱頭とのコントラストも鮮やか過ぎる・・・。
ともかく、写真では伝えきれないくらい派手さで、これが人の手による改良を経ていない野生植物の花か、と。
そうか、刺姿がジミジミだったのは、この美しい花を際立たせるためだったのか、と得心します。
ほら、こうして並みいる美花蝦サボ軍団と比べてみても、ひときわ目もあやな美しい花です。

凡家来。初夏の陽射しを浴びて、きょうばかりはと主に面目を施す、の図ですね。




























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