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コピアポア探訪 エキノイデスとドゥラ

 
 相変わらずコピアポアが人気です。しかし、オークションや、専門業者の店頭などでも、明らかに誤った名札のつけられた植物が売られているのが目につきます。それだけ種の同定が難しいということなのですが、海外からの輸入種子などは、しばしば別種であることも多いので、一定程度顔がわかるサイズになったら、ちゃんと判別してやることが必要です。とくに、市場に植物を出す人には注意してもらいたいところです。

 なかでも間違えられていることが多いのが、黒王丸や孤竜丸、黒士冠などのように白肌にならず、とてもいかつい刺で武装するグループで、私は「青鬼コピ」などと呼んでいますが、この系統の日本での扱いはかなりいいかげんです。分類には色々な考え方があるので、ひとつの植物に異なる名前がつけられること自体はあり得ることなのですが、縁もゆかりもない名札を背負ったコピが売られることも珍しくありません。あまりデタラメな植物が流通すると、そのうち「コピはよくわからない」と人気がなくなってしまいそうで心配です。コピアポアはとくに、信頼できるソースからの入手がおすすめです。




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   Copiapoa echinoodes in habitat (S of Bahia Salada, Copiapo)



 今回取り上げるのは、鬼の角もかくやという太く鋭い刺を突き立てる大変観賞価値のあるコピアポア、エキノイデス(Copiapoa echinoides)です。特徴は天を突くような上向きの太い中刺で、肌色は黄緑~濃緑~濃褐色。日本語名では竜魔玉があてられますが、銅鑼丸と呼ばれることもあります。個人的には黒王以上に魅力的なサボテンだと感じますが、十分理解されているとは言えないので、簡単に整理してみたいと思います。




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   Copiapoa echinoides in habitat (Ruta Caleta Pajonal) stiff spined form



 エキノイデスはコピアポ(copiapo)から南に下ってトトラル(Totoral)の手前あたりから分布がはじまり、南はワスコ(Huasco)あたりまでとなっています。グーグルマップで見るとわかりやすいです。北側ではマルギナータ(Copiapoa marginata)、南側ではコキンバナ(Copiapoa coquinbana)と接していて、どちらの種も青肌コピであり、大きくとらえればマルギナータからコキンバナまでをひとつの種として括ることも可能かも知れません。とくに、南のコキンバナとは分布域も入り組んでいて、中間的なコロニーも多数あります。そうしたことから、かつては多数の名前があったのですが、いまはこのエリアの青肌コピはエキノイデスにまとめられました。現状、エキノイデスの変種としてクプレアだけが認められており、整理すると以下のようになります。多少無理を感じるので、今後再編があるかも知れませんが。




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   Copiapoa echinoodes 'dura' KK607 (Totoral)



エキノイデス(竜魔玉)Copiapoa echinoides var.echinoides (Lem. ex Salm-Dyck) Britton & Rose
<synonym>
①ドゥラ(銅鑼丸)Copiapoa dura F.Ritter
②ブリッジシー Copiapoa marginata var.bridgesii (Pfeiff.) A.E.Hoffm. 



 まず、人気種のドゥラは、エキノイデスのシノニム(同じ種)として、取り込まれていますが、これは妥当でしょう。ドゥラはタイプ産地も不明確で、記載上の特徴も、様々あるエキノイデスのタイプのひとつと言えます。国内で竜魔玉の名前で流通してきたものは、比較的南寄りに分布するあまり刺が強くないタイプが多いのですが、一方で園芸的にドゥラの名前で出回る個体は刺が太いので大変人気があります。かつてコピアポアの有力サプライヤーだったKarel Knize氏がデリバリーした北方系の型がオリジナルと思われますが、これも典型的なエキノイデスです。園芸的愛称としてドゥラとか銅鑼丸の名前を使うことには何の問題もないのですが、エキノイデスとの違い云々を言い出すと見当違いな話になってきます。
 一方で、上記のようにブリッジシーをエキノイデスに取り込むのは無理があると考えます。ブリッジシーは長くマルギナータ(Copiapoa marginata)の変種と考えられていましたが、分布域はチャニャラルの北です。両者の間には不毛のチャニャラルバレーが横たっており、自生地は分断されています。ちなみにマルギナータも捉えどころのない種で、カルデラナとはボーダレスに繋がっていて、どこで線を引くのか難しい。




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   Copiapoa marginata in habitat (S of Caldera)
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   Copiapoa marginata var.bridgesii FK131(North of Chanaral airport)



クプレア(君光丸)Copiapoa echinoides var.cuprea (F.Ritter) A.E.Hoffm.
<synonym>
①グリセオビオラケア Copiapoa griseoviolacea  
  
 ドゥラは亜種変種としても認められていませんが、クプレアは残されています。もともとはCopiapoa cupreataとして記載されましたが、そもそも情報が薄く特徴も自生地も判然としません。なので、私の見解としてはドゥラ同様にクプレアもシノニムに格下げするのが妥当と考えます。一方で、クプレアについては、近年コキンバナから分離された種であるフィエドレリアーナ(Copiapoa fiedleriana)のシノニムだと言う人もいます。ただ、そもそものクプレアがどこに生える植物なのかが不明確なので、この議論にどこまで意味があるのか、難しい。また、濃色の肌と漆黒の刺が人気の最近の記載種、グリセオビオラケアは、種としては認められずクプレアのシノニムになっています。これはクプレアの肌色の記載が、赤銅色から黒紫色とされていることからと思われます。クプレアを変種として立てるかどうかは別として、グリセオビオラケアをエキノイデスの南方タイプとして捉えること自体は自然だと思います。このタイプはきわめて特徴的ではありますが、エキノイデスの変異の幅の範囲に収まると考えても良いでしょう。コロニーがどの程度隔離されたものなのか、特徴の安定性等にもよりますが、亜種・変種としての扱いは検討しても良いかも知れません。




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   Copiapoa echinoides in habitat (Carrizal Bajo) weak spined form



 エキノイデスとコキンバナの関係を言い出すと、これがまた難しい。ざっくりとした識別法は、エキノイデスは蕪状の塊根を発達させることが少ない(太めの直根)ですが、コキンバナはときに地上部より大きな塊根が出来ます。ただ、南の方のエキノイデスには塊根を生じるタイプも多く、これを理由にコキンバナである、とみる人もいます。そして、コキンバナ系統には近年、コロニーごとに色々な名前がつけられていますが、現状以下のような名前が種として認知されています。

Copiapoa algarrobensis
Copiapoa armata
Copiapoa corralensis
Copiapoa fusca
Copiapoa pendulina
Copiapoa schulziana


 いくつかは、輸入種子の実生が出回っているので、育てている人もいるかも知れません。先にも書いたように南方系コピの一番人気であるグリセオビオラケア(Copiapoa griseoviolacea)は、すでにエキノイデス(クプレア)のシノニム(同じ種)と認定され、名前が消えています。リストアップしたこれらも、将来はコキンバナやエキノイデスに回収される可能性があります。ですが、それぞれ園芸的には興味深い特徴を持っており、自生地データとしっかり紐づけて楽しめば魅力的なコレクションになるでしょう。

 余談ですが、私たち日本人がコピアポアを「コピ」と呼ぶように、欧米の愛好家の間では「ポアズ」と呼ぶ人たちがいます。「ポアズ」は全サボテンのなかでももっとも分類が動いているグループで、たとえば著名な黒士冠は、いまはdealbataやcarrizalensisではなく、古い名前のCopiapoa malletianaが対照されるようになっています。こういう動きに振り回される必要はないのですが、自生地を歩く人が増えて、分類もどんどん更新されるので、知っておいても面白いかなと思います。















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ジャンル : 趣味・実用

エスコバリア・グラータ


 今回は北米産の小さく精密なカクタスを紹介します。先だって出版した「シャボテン新図鑑」には紙幅の都合で掲載できなかった種です。もっとも、本にがんばって押し込んでも、2~3行の解説しか書けなかったと思うので、この種にとっては、ブログの方がのびのびできるかも知れません。




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    Escobaria hesteri ssp.grata



 エスコバリア・グラータ(Escobaria hesteri ssp.grata)は、本属の特徴でもある透明感のある白く美しい刺で球体を覆う小型種で、大きさは径3㎝ほど、高さも6cmほどという小型種です。ごらんのように、花は印象的なマゼンタで白い刺によく映えます。とりわけ良く晴れた日に太陽光線を浴びた刺は眩しいほど白く、強い印象を残します。
 自生地はコアウィラ州のモンクローバ(Monclova,Coahuila)近郊のLimestoneやNovaculiteの石くれが散らばる丘で、ブッシュの下などに生えています。こうした環境は、同じエスコバリアのミニマ(Escobaria minima)やヘステリと似たロケーションです。




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    Escobaria hesteri ssp.hesteri
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    Escobaria minima



 実際、本種は分類上はおなじ小型のエスコバリア、ヘステリ(Escobaria hesteri ssp.hesteri)の亜種という扱いになっています。ヘステリはテキサス南部の狭い範囲にだけ生えている植物で、群生しやすい植物ですが、グラータも古くなると株立ちになるようです。両者の識別は容易で、また産地も隔絶しているので、別種として捉えてもよいかも知れません。また、ヘステリと同じ場所に生えているミニマとも通じる部分があります。北極丸(Escobaria vivipara)のミニチュアのようにも見えますね。なんにせよグラータには刺や花、エスコバリアの良さをぎゅっと凝縮したようなところがあります。




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 エスコバリアは北米原産の小型種のグループで、 英名"pincushion cactus"はマミラリアと同じです。実際両属は近しい関係にありますが、観賞上はギムノカクタス系のツルビニあたりと共通するものがあります。精密にデザインされたような刺の配置や、色彩の美しい花はとても魅力的ですが、種の識別が難しく、一見するとどれも同じに見えるようなところがあるせいか、あまり栽培されていません。また、育種の目標になるようなわかりやすい特徴もないので、原種の良さを楽しむグループと言えます。その良さを知ってもらいたくて、「シャボテン新図鑑」では、かなり手厚く取りあげましたが、本種は載せきれなかったものです。
 グラータは塊根が生じることはなく、栽培にもとくにクセはありません。春から秋にかけて、通常の管理で元気に育ちます。大群生にして遠くから眺めるよりも、小さな個体を小さな鉢にうえて、ぐっと目を近づけて精密な刺と美しい花を観賞したい植物です。







(追記)「シャボテン新図鑑」の記載でアズテキウム・花籠の学名がAztekium hintoniiと誤植されていました。編集時のコピペミスで、読者からのご指摘で気がつきました。正しくはAztekium ritteriです。訂正させていただきますm(_ _)m。












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その後のコピアポアの箱庭


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   Copiapoa cinerea ssp. columna-alba Pan De Azucar form, grown from seed 12years



 いまから4年前に、「コピアポアの箱庭」という記事を書きました。寄せ植えされた実生のコルムナアルバ・孤竜丸(Copiapoa cinerea ssp. columna-alba)などについての記事です。きょうはその寄せ植えを崩してそれぞれ鉢上げしたので、そのことについて書いてみます。上の写真がその寄せ植えで、この状態で8年くらい植え替えなしで育ててきました。山木ではないけれど、扁平に、そして白く育ってくれています。蒔いたのはおそらく12年くらい前で、実生3~4年目くらいで寄せ植えにしたのだと思います。さすがに土もカチンコチンに固まって、ここのところは成長も鈍り気味でワンシーズンに刺座2つくらいしか増えていません。




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   picture taken 4years ago.



 こちらは4年前の記事を書くときに撮った写真です。サボテンならば4年たてばふつう倍くらいには育ちますが、これを見ると比べても違いが判らないくらいで、いかに成長していないかということですね。でも、頂部には綿毛がたっぷりあるし状態はとてもよい。健康なコピたちです。




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 あらためて確認すると、この寄せ植えのなかの孤竜丸はよく育った個体で径5cm弱くらい。同じときに蒔いて、植え替えを頻回におこなった同期はもっと大きくなっているので、意図的なネグレクトによる硬作りと言えます。なかでも一番小さい孤竜丸はまだ親指の爪とあまりかわらないサイズ。つまり10年以上かけて1.5㎝です。あり得ない成長の遅さですが、肌はいい感じに白くなってきています。




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   Copiapoa cinerea ssp. columna-alba in habitat, Atacama Chile
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   Copiapoa cinerea ssp. columna-alba grown from seed (12years)




 上の写真は、同じくらいの大きさの自生地のコルムナアルバ。チリのアタカマ砂漠で写したもので、当然のことながら野生株です。とても白くて歳を重ねた風格があります。その下の写真は箱庭コピの一番育ちが遅い個体。超硬作りとは言うものの、野生株と比べてみるとだいぶ瑞々しく若い株であることがわかります。種子から10年かけて2cm足らずに育った株がこの若々しさであることから推測すると、上の写真の小さな自生地の孤竜丸はおそらく20~30年生きているのではないでしょうか。




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   Copiapoa gigantea grown from seed 12years.



 こちらは同じ鉢、同じ環境で育ったギガンテア(Copiapoa gigantea)です。気持ちいい緑色。この系統は自生地の野生個体もミルキーグリーンといった肌感で真っ白な個体は少ないですが、古株になるとそれなりに白い。あと山の上のほうのコロニーも白い(なので別名で呼ばれることもある)。でも実生育成株は、このサイズに10年あまりかけても、この肌色なので、白くするのはそうとう難しいと思われます。でもこれはこれで美しいです。




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   'Poas' are arranged in a 'habitat style'



 寄せ植えを崩して、それぞれの株をアタカマ砂漠をイメージした自生地風のアレンジで植えこみます。コルムナの自生地と同じ、砕けた花崗岩の砂であしらってみました。この鉢をぼーっと眺めていると、またチリに行きたくなります。











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プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。著書:
「珍奇植物 ビザールプランツと生きる」
(日本文芸社)
「多肉植物サボテン語辞典」
(主婦の友社)

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