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コノフィツムがいてくれる。

  
 もし、コノフィツムを育てていなかったら。
 秋から春まで、サボテンやコーデックスの大半が、休眠したり、動きが鈍る季節は、植物生活もかなり退屈なものになるでしょう。でも、日本の野山が枯野一色になるころ、メセン栽培場では、まるで春のようにコノフィツムたちが動き始めます。




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     Conophytum pellucidum ssp.terricolor M.1443.29 Rietberg



 写真は9月に撮影した、ペルシダム(Conophytum pellucidum ssp.terricolor)です。
 蒸し暑い日本の夏を、乾いた旧皮を被って乗り越えると、水もやらないのに花を咲かせました。夏場に水をやっていれば、この時点で新球が吸水して膨らみ、皮を突き破って育っていますが、この株は水を切ったままだったので、ミイラみたいな状態のまま、開花しました。これはこれでビザールな眺めです。でも、3月半ばから半年間、一滴も水を与えていないのに、これだけ花を咲かせる力を蓄えていることに感心します。




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   Conophytum pellucidum ssp.terricolor SH1252 Krymekaar Junction



 上の写真は、一度だけ水をやったあと、開花したペルシダム(C.pellucidum ssp.terricolor SH1252)。独特な窓模様から「バッドウィング(蝙蝠の翼)」と呼ばれる有名なタイプです。旧皮こそ突き破ったものの、開花に力を使ったため、新球はじゅうぶん膨らんでいません。でも、その分、紅い宝石のような窓の透明感、色合いが深くて美しい。その後、しっかり水を吸い上げて膨らんだのが、下の写真です。ペルシダムは、夏場に日陰で休ませているときに水をやると徒長しやすい。日陰では断水し、水を吸って動き出したらしっかり強い光線にあてることで、丈低く形のよい群生株に仕上がります。




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     Conophytum cubicum N Eksteenfontein(TL)



 その名のとおりキュービックなコノフィツム、クビクム(Conophytum cubicum)。半分溶けて柔らかくなったキャラメルみたいな、微妙なひしゃげぐあいが魅力的です。四角いコノは他にもアンゲリカエとかクルシアツムとか、いくつかありますが、たぶんこれがいちばん丈夫で育てやすい。乾いた皮も薄くて自然に剥がれます。この種は、やはり成長期のはじめの秋口に、長い花筒を伸ばして純白の花を咲かせます(写真下)。みかけたらぜひ手に入れてもらいたいコノフィツムです。




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     Conophytum regale Ratelpoort(plant from TS)



 白い花が続いたので、こんどはピンク花のコノフィツム、レガレ(Conophytum regale)。古典的なタビ型フォルムなのに、まんなからへんに窓があります。というか透明な部分がある。ペルシダムやマウガニーのようにほとんど地中に埋まって育つわけではないので、窓がここにある決定的な意味はわかりませんが、とてもチャーミングです。たぶん、ここに窓があるとかわいいからそうなってるに違いない。茎の部分が弱いのか、頭数が増えると倒れてしまったりして、大きな標本に育てるのはなかなか難しい。




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     Conophytum minimum 'wittebergense' M1472.5 Klein Spreeufontein



 こちらは最近人気があるアラベスク模様のコノフィツム、ウィッテベルゲンシス。中国などでとても人気になっていて、最近は毒々しいくらい濃色の紋様の株も出てきています。紋様が濃色で派手だと驚くような値段になるみたい。この株は無選抜の平均的な顔で、うちにはこういうあっさり顔しかいません。花は几帳面な夜咲きで、夕方も朝も開いてない。このときもカメラを構えて待っていましたが、結局まっくらになるまで咲きませんでした。花粉つけをしなくても種が採れるのですが、蒔くと発芽しない。顔違いを殖やしたくなったら、夜更けに懐中電灯で授粉しないといけませんね。




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 そんなコノフィツムたちも、陽射しが強くなっていくにつれて、少しずつ眠たげな表情をうかべるようになります。球体の成長が止まり、肌も陽射しにやけて赤味が強くなってくる。それから徐々にハリがなくなって、しわっぽくなる。そうなれば、もう水をやっても膨らみません。また半年間の、お別れの時期が近づいてきています。もうすぐ春なのに。いや、もうすぐ春だから。

















テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

ラフレシアの記。

    
 じっとりと蒸し暑くて、薄暗い熱帯林を、ツル草に足を取られながら何時間も歩いて・・・。ラフレシアは、本来なら、そんなふうにして出会うべき花でしょう。世界最大の花にして、葉も茎も存在しない、完全寄生植物。19世紀、シンガポールの創設者ラッフルズが発見した稀代のビザールプランツは、マレー半島を中心に東南アジアに広く分布します。昨年の夏、ボルネオ島を旅したときに、私は運良くこの花を見ることが出来ました。
 ラフレシアと呼ばれる植物は、最大の花径(90cm)となるアーノルディ(Rafflesia arnoldii)を筆頭に十数種があり、いずれもよく似ています。私が見たのは、マレーシア・サバ州に分布し、2番目に大きな花を咲かせる種、ケイシー(Rafflesia keithii)です。実は、ここで紹介したいのは、この奇天烈な植物と、わりと手軽に出会ってしまったというお話です。




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      On the way to Poring Hot Springs, Sabah, Borneo



 昨夏のボルネオ行きでは、動物観察が主眼だったので、この植物の探索に何日も割くことは出来ませんでした。しかし、ガイドによれば、一年のうち半分くらいは手軽に見られる場所がある、というのです。場所は有名なキナバル山の麓にある保養地・ポーリング温泉(Poring Hot Spring)付近の農村です。車を走らせてみると、街道沿いに「ラフレシア開花中」という看板が、何カ所か出ていました。そこで800円ほどの入場料を払うと、日本の里山のような場所に案内されます。薄暗い藪を歩いたことは確かですが、わずか5分くらい。そこに、開花中のラフレシアがありました。はい、あっけなかったです。




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     Flower of Rafflesia keithii (2days) , Sabah,Borneo



 私がみた花は二つで、ひとつは前日咲いたもの(2日目)で、それは見事なものでした。直径こそ50cm足らずでしたが、形容しがたい血肉色の花は、ぼってりと厚みがあり、面妖な斑点をまとい、独特の質感があります。もちろん葉も茎もなく、地面に直接生えたような状態です。ラフレシアの花は動物の腐肉のイミテーションで、人間からすると悪臭を放ってハエなどの送粉昆虫を集めます。しかし、ガガイモ科の多肉植物などで慣れている私には、そんなに強烈なものには感じられませんでした。ほんとうは手触りも確かめたかったのですが、触るとすぐにダメになってしまうのでダメだ(商売道具ですからね)、と言われて断念しました。




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     Living flower bud of R.keithii
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 ラフレシアは雌雄異株で、蕾があらわれてから咲くまで1年以上かかりますが、開花は1週間足らずです。私が見たもうひとつの花は5日目ということで、すでに黒ずみはじめ、死を宿している風情がありました。この花の一種背徳的な魅力は、根も葉も生じない完全寄生という特異な生活史にくわえ、咲き誇りながら腐敗するという、死をあからさまに宿した生の禍々しさにある気がします。




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     Rafflesias are growing on Tetrastigma vine



 ラフレシアが寄生するのは、ブドウ科のつる草、ミツバカズラ属(Tetrastigma sp.)に限られています。完全寄生ですから、当然光合成もせず、栄養分はすべて宿主に依存しています。ラフレシアの微細な種子は、ミツバカズラの根茎上で、特定の条件のもとで発芽すると、微細な糸状の細胞を宿主の体内に侵入させ、潜伏します。その後、一定の期間を経て出蕾。さらに時間をかけて開花、結実します。私たちの目に触れるのは、開花繁殖のプロセスだけですが、それ以外の時間、ミツバカズラの体内でどうしているのか等、その生活史にはままだ解明されない謎がいくつも残されています。
 また、寄生植物などというと、想像を超えた生態のような気がしますが、実は、園芸家が行う接ぎ木のようなものと言えます。ラフレシアは、宿主であるミツバカズラに自らを接ぎ木しているような状態ですね。ミツバカズラの側は、何らかの理由でラフレシアを自分の一部だと誤認して、その侵入を許すわけです。ただ、発芽条件などは解明されておらず、いまだに人工繁殖や栽培は出来ないとされています。




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     4days flower
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      dead flower



 では、私がみた農家の里山のラフレシア、つまり覆いで囲われたラフレシアは天然自然のものなのか?という疑問がわいてきます。ミツバカズラの多くは、熱帯林内のギャップのような場所を好むため、原生林だけでなく、人の手に入った里山的な場所にも多く見られるそうです。そういう意味では、今回見た場所も生育不適地ではない。とはいえ、そんなに都合よく、道路から歩いて5分のところに次々咲くものなのか、とは思いますよね。
 実際、かつては山から刈り取ってきたラフレシアを庭に置いただけで、咲いた咲いたと客集めしていた人もいたそうです。しかし、ここでは開花中の花、咲き終わった花、蕾、蕾のまま枯れたもの、いずれもミツバカズラの根茎からしっかり生えています。園の担当者にどうやって栽培しているのか?たまたま生えているのか?などと訊きましたが、曖昧な表情を浮かべるだけで教えてくれません。観光ガイドさんは、ラフレシアの種をミツバカズラに埋め込めば良いのだ、などとと言いますが、ほんとかな。出来るのなら凄いけど。




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 帰国後、内外の文献資料などあたりましたが、ラフレシアの播種発芽は、培地上でも、宿主植物上でも、いずれも成功していない、と書かれています。ただ、そのなかでひとつヒントになる記述もありました。自生地でラフレシアが寄生したミツバカズラ、つまり咲いているのを現認した宿主を、引っこ抜いて栽培環境に移植したところ、その後何年にもわたって断続的に咲き続けたというもの。また、これを応用して、ラフレシアに“感染”したミツバカズラを分割して、そうでないミツバカズラに接ぎ木したところ、それぞれが開花した、というもの。
 私の推理は、この園では、近郊の原生林から、ラフレシアの咲いている、もしくは咲いた痕跡のあるミツバカズラを生きたまま引っこ抜き、定植しているのではないか、という見立てです。もしかしたら、接ぎ木もやっているかも知れない。咲かなくなったら、また新しい宿主の木を山奥から持ってくれば良いわけです。ひとつ疑問は、何年にもわたって咲くということは、同時に数多くの種子が発芽し、時間差で開花しては枯れる(もしくは、多数の種子がミツバカズラに付着し、時間差で発芽成長する)、ということなのか。それとも、ラフレシアは宿主全体に菌糸のように寄生細胞をめぐらせていて、花が枯れた後も生き続けているのか、ということ。このあたり、詳しい方がおられたら是非ご教示いただきたいところ。ともあれ、これだけ有名な植物でも、まだまだわからないことがたくさんある。珍奇植物の世界は、ボルネオの森と同じくらい深いです。
 








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コーデックス・メセン(Sphalmanthus/Phyllobolus)

   
 リトープスやコノフィツムなど、メセン科の多肉植物といえば、丸っこいものをイメージしますね。でも実は、その他に、いわゆる草メセンと呼ばれるような、茎があって葉っぱがあって・・・という形の植物がたくさんあります。
 そのなかで、今回は塊根、コーデックスをつくるメセンの仲間のひとつ、スパルマンサス属(Sphalmanthus)を取り上げます。現在は、親指姫(旧ダクチロプシス=Dactylopsis)などとともに、フィロボルス属(Phyllobolus)に統合されていますが、旧名で流通することの方が多いので、ここではスパルマンサスと呼んでおきます。インスタグラムに写真をポストすると反響が大きいので、多くの人にアピールする魅力があるのでしょう。




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     Sphalmanthus sp. Eenriet  (M.1861.25) 




 海藻のミルのような不思議な姿のこの種は、正式記載がなく産地名でエエンリエット(Sphalmanthus sp. Eenriet)と呼ばれています。草体と花も面白いですが、最大の魅力は、メセン科らしからぬゴツゴツと不整形な塊根・塊茎でしょう。まるで石から生えているように見えます。この属のコーデックスは、地中に生じるイモから、半分地上に出る深緑色の塊茎まであり、この種は後者に近い。これで7-8年経っている株です。葉茎にはモニラリア属(Monilaria)等と同様のキラキラと輝く水泡状の粒々があり、産毛が密生しています。




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     Sphalmanthus tenuiflorus (M.1861.123) Quaggaskop



 
 こちらはこの属の代表種ともいえるテヌイフロラス(S.tenuiflorus)。上記のエエンリエットとよく似ています。学名のテヌイスは、細いという意味ですが、その名の通り、糸状の細い花弁が不思議な印象を与えます。基本は上の種と同じ黄緑花ですが、特定のコロニーの実生からは、写真のような桃色花が一定確率で出現します。黄緑色の花も海中植物っぽさを強く感じさせて魅力的ですが、こちらのピンク花も妖しい美しさです。実生からの出現率は10%くらいでしょうか。また、海藻のような茎葉はとても軟質なので、大きく伸びると栽培下では倒伏してしまいます。この茎葉が生じるのは秋~春の成長期だけで、夏の休眠中はコーデックスだけになります。




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     Sphalmanthus sp.'noodle tufts' (M.1861) Sutherland




 ちょっと雰囲気が違うこの植物は、同じスパルマンサスですが、やはり正式記載がなく、かつてメサガーデンのリストではM.1861という番号が振られて'sp. noodle tufts'(麺の塊)と呼ばれていました。サザーランド(Sutherland)産で、塊根はなく、やや太い茎を分岐しながら伸ばし、先端部に沢山の短い葉が束状につく面白い植物です。塊根が出来ない分、持久力が乏しいので夏越しが難しく、写真の株も去年の夏に枯れてしまいました。なので写真は去年のものを記録として残しておきます(涙)。




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     Sphalmanthus resurgens (M.1811.6) S Calvinia



 
 最後は、この属でいちばんコーデックスが肥大するレスルゲンス(S.resurgens)です。塊根は扁平で大きく育ち、葉は短く、ちょっとアボニア・クイナリア(Avonia quinaria)を思わせる姿。これもコーデックスはゴツゴツと地上にも盛り上がってくるので、存在感たっぷり。葉の落ちた休眠期は石の置物みたいになりますが、それもまた一興です。




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 この仲間、塊根型は休眠期にしっかり断水しておけば、まず大丈夫です。秋からの成長期は寒さにも強いし、水切れするとすぐ葉が萎れてしまうので、凍らない温度を保ちつつ、鉢をカラカラにしないように管理しています。問題は、繁殖です。基本が塊根性だけに、枝挿し葉挿しで殖やすのは困難です。といって、山木の輸入は見たことがないし、種子から育成するしかありません。しかし、その種子もあまり出回らない。今年のメサガーデンのリストには、何種が掲載されるでしょうか。稀少なほど欲しくなる、という意味でも、マニアの食指が動く植物と言えそうです。










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沙漠植物、栽培、探究。

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