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焼けぼっくいから花が咲いた。


 キセロフィタ・アルゲンテア(Xerophyta argentea)。
多肉植物の範疇からもズレているし、コーデックスと呼んでもピンとくる人は少ないでしょう。やけぼっくいのようなこの植物、実は「復活植物(resurrection plant)」とも呼ばれる特異な生態をもつ珍奇植物中の珍奇植物。前々からいちど手元で育てたいと思っていたのですが、運良く、昨年の春に入手することができました。




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    Xerophyta argentea flowering
 



 この植物の醸し出す感じをどう説明したら良いのか。枯れ木のような幹の部分は、細かな繊維が寄り集まったヘゴの幹みたいな感じ。ところどころ苔が生えており、地衣類も付着しています。全体に焼け焦げたみたいな風情もあります。幹はそこそこの太さと重さがありますが、繊維の塊のようで貯水できる部分はあまりなさそう。しかし、キセロフィタは、アフリカ南東部に広く分布し、その多くは雨期乾期の別がハッキリした地域に生えています。いったいどんな仕組みで乾期を生き延びるのでしょうか。
 分類学的な位置づけを紹介すると、キセロフィタ属は、タコノキ目ヴェロジア科(Velloziaceae)の単子葉植物で、主に南東アフリカに分布しています。タコノキ目には腐生植物として有名なホンゴウソウなどもあり、面白い植物の多いグループ。同じヴェロジア科のヴェロジア属の植物は南米ブラジルなどに分布しており、サボテンのユーベルマニアの自生地写真などにしばしば映りこんでいます。黒い幹と美しい花がとても魅力的で、かつてユーベルと一緒に種子を入手して育てたことがありますが、あまり大きく出来ず、数年で枯らしてしまいました。




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 さてキセロフィタ。姿はかつて憧れたヴェロジアとよく似ています。昨年届いたときは、葉も枯れていたので、まさに焼けぼっくいに枯れ葉がくっついているような、およそ生きているのか死んでいるのか判らない代物でした。幹に生えた苔や地衣類を見るに、どうも水が好きそうな代物だと思ったので、鉢に植えつけたら腰水し、たっぷりシャワーをかけました。すると不思議なことに、翌日には青々とした葉が出ているのです。
 でも、ちょっと待て・・・たった一日で、こんなに葉が伸びる?わけはありません。信じられないですが、幹にくっついていた茶色い枯れ葉が、わずか一日で青さを取り戻し、瑞々しく蘇ったのです。これが、キセロフィタが「復活植物」と呼ばれる所以で、最大の魅力。下の写真は、今回ブログに載せるために改めて撮影したもので、いったん乾かして枯れた葉と、たっぷり散水して24時間後の様子です。一昼夜で、これほど変わるとはほんとうに驚きです。




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   dried out...but leaves are still alive
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   24hours after watering, leaves turn green again




 なぜそんなことが可能なのか。ざっくり言うとこういう仕組みです。キセロフィタは、多くの多肉植物にような貯水能力の高い太った幹や、肉厚の葉を持っていません。そのため、乾期には葉身の細胞が含む水分はすぐに失われていきます。このとき、キセロフィタは、葉細胞の葉緑体を分解し、代謝を停滞させることで、水分喪失による細胞の破壊を抑えます。ふつう、植物の葉が枯れることは細胞組織の死を意味し、その過程は不可逆ですが、キセロフィタにとって枯れた葉は“死んだふり”に過ぎず、再び水分を得たときに速やかに復活を遂げることが出来るのです。最大で95%の水分が失われても、その状態で長期間静止状態を維持することができ、再び水分が補給されれば数時間から数日以内に完全な代謝活動を回復させる能力があるとの研究もあります。
 こうしたメカニズムも持つ植物は他にもあり、もっとも有名なのが「ジェリコのバラ」と呼ばれるイワヒバです。サボテンでも、クチクラの乏しい松露玉の仲間(Blossfeldia)にはこうした性質があるという文献を読んだことがありますが、実際に日干しにする勇気がなくて試したことがありません。なんにしても、キセロフィタの薄く脆そうな葉が、こうした特異な能力を発揮するのを目の当たりにすると、なかなか感動的です。




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 今年は梅雨が長過ぎて、おまけに気温も上がらない。大半の夏型コーデックスは調子が出ませんが、この木だけは嬉々として雨に打たれているように見えます。花も断続的に咲き続けています。植えこんで一年余り、根がどの程度しっかり張っているのかわからないし、触るとまだぐらつきます。でもこの植物は葉の表面だけでなく、繊維質の塊のような幹からも吸水しているかも知れません。根の状態はともかく、これだけしっかり開花するということは一定程度活着状態にあると考えていますが、この先何年か育ててみないと、確かなことはわかりません。よくわからない植物ほど、栽培するのは楽しいものですね。











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「多肉植物サボテン語辞典」 正誤表


 先日、刊行となった「多肉植物サボテン語辞典(主婦との友社)」。
写真が多くて良い、読み物として楽しめる、知らない言葉がわかった、などなど感想をいただき、ああ、忙しかったけど出してよかったなと思いました。一方で、これ違うよ、というご指摘もあって、こちらもありがたく受け止めつつ、監修者としては申し訳ないかぎりです。




多肉サボテン語辞典カバー_0525risize



 
 見苦しい言い訳をすると、この本は私が書いたテキストばかりではなく、編集サイドで作った部分が結構あり、作業の後半で一気にレイアウトやページ調整をしました。その過程でミスが起きたり、またチェックの時間が十分とれなかったところがありました。そのため、イラストや写真・解説と項目名がずれてしまうとか、学名のスペルミスもありました。編集サイドが作った本の帯が、中身と一致していないという指摘も頂きました。
 現状、書店側にも本に正誤表をつけてもらうようお願いしていますが、時間がかかりそうなので、このブログに正誤表を載せることにしました。ページごとに、以下整理して記します。



●P.8 「アクテリック」

1年ほど前に製造中止になったと指摘を戴きました。いまもネットなどでは在庫品の販売をみかけますが、早晩なくなります。カイガラムシ対策としては、最近出た「トランスフォーム」という薬剤が有効です。


●P.37 「エンセファラルトス」の挿絵

なぜか、ソテツではなく、サボテンになっています。レイアウト変更時に起きたと思われます。


●P.60 「グラウカム」の項目

学名表記がAloe glaucumになっていますが、どう見てもアロエではなくサボテンですよね。
正しくはAcanthocalycium glaucumEchinopsis glaucina)です。
レイアウト時、アロエ・グラウカと混同したと思われます。


●P.63「コルチカム」学名のスペル正しくは Colchicum です。


●P.81,84 ソテツ類関連

写真、解説文の学名表記が Cycas Zamia floridana になっています。これは間違い。
Cycasは不要で、正しくはZamia floridana です。削除したつもりが残ってしまった。

なお、各属のソテツを園芸的にまとめてサイカス類と呼ぶ、と書いています。これは日本ソテツ(Cycas revoluta)を代表種と見ての慣行ですが、国際的にはサイカッド(Cycad)がソテツ類の総称であることを補足します。

●P.84 「雑種」の項
「同種の選抜育種が行われ、これは交配と呼ばない」
→「同種の選抜育種で改良されたものは、サボテン園芸では一般に交配種と呼ばない」


●P.91 「神仙玉」 
解説文に「鯱の頭に似た…」とありますが、フェロカクタスの有名種「鯱頭」の誤植。「鯱頭に似た…」です。
どうしてこうなったのか…謎。鯱の頭にも似てないことはないかもしれないかも知れないですが…。


●P.95 P.102 玉つづり ブリトー

→学名は Sedum morganianum 'Burito' 


●P.122 var.はvariety の略


●その他 

本の帯に「ツリスタ属」が掲載されているのに、解説文として載っておりません。学名としては掲載されていますが、不親切ですよね。本に載せる想定でコンパクトに書いてみました。

「ツリスタ属:いわゆる硬葉ハオルチアの一部が、近年、花の特徴などからツリスタ属(Tulista)とハオルチオプシス属(Haowrthiopsis)とに分離されました。前者にはTulista marginata(瑞鶴)、後者にはHaworthiopsis sordida(ソルディダ)などが含まれます。いずれも園芸的には今もハオルチアとして扱われることが多いですが、新しい分類名にときめくのがマニアの心情でもあります」

といった感じでしょうか^^(これ以上マニアックに書き込むと、初中級者には難しすぎます!と編集サイドに怒られます)。

万一、ほかにも出てきたら、ここに追記します。。

チェック不足、重ねてお詫びしますm(__)m。。











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一点モノ⑪エリオシケ五百津玉



 南米チリ原産のカクタスとして、コピアポア黒王丸と双璧をなすのが、五百津玉(Eriosyce aurata 'ihotzkyanae')です。ガッシリとした大柄のボディを漆黒の太刺で武装した姿は風格たっぷりで、多くのマニアを魅了してきました。しかし、栽培が難しいため、有名な割に接ぎ木苗以外を見かけることは少ないもの。かつてはコピアポアや近縁の極光丸(極晃丸)グループの各種とともに、かなりの数の原産地球が入っていましたが、大半は活着することなく消え、いま残っている山木はほぼ皆無ではないでしょうか。
 写真の五百津玉は、メサガーデンの種子を蒔いて育てたもので、“M370.847 NW Ovalle Coastal region”(オヴァーエ南西の海岸地帯)というデータがついています。コピアポアなどの生えるエリアより、少し南になりますね。種子から20年ほどかけて、直径15cmくらいに到達しました。接ぎ木をしていない個体としてはかなり大きい部類だと思いますが、まだ開花はしていません。このサイズで生き残っているのは、うちでもこの株だけ、まさに一点モノなのです。




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  Eriosyce aurata 'ihotzkyanae' M370.847 NW Ovalle Coastal region



 五百津丸や極光丸の栽培のどこが難しいかというと、大きく育つにつれて、根の再生(発根)が極めて悪くなるところにあります。私もかつて何本かの山木を手にしましたが、根が育たず活着しませんでした。同じときに入れたコピアポアがいまも元気であることを考えてもかなりの気難しさです。山木がだめなら、ということで種子から育ててみました。新鮮な種子はよく発芽しますし、最初の5年ほど、500円玉サイズくらいまでは割と順調に育ちます。ただ、このあたりから根の再生が悪くなってきて、植え替えするたびに根が張らずに枯れる株が出てくるのです。対策としては、できるだけ植え替えをしない。土が固まるなどして植え替えるときも、根をなるべく傷つけないようにする。時機は新刺が出始めた頃に限る、といったところでしょうか。とても消極的な栽培です。
 五百津や極光の根は、いわゆる塊根にはなりませんが、古くなると3ミリくらいの太さになって硬く木質化します。木質化した部分は吸水せず、先端の毛根のある部分だけで吸水します。この部分が傷つくと、木質化した部分からは新根が出にくいため、やがて枯れてしまうことが多い。万一、ネジラミなどがついたら、ジ・エンドです。一方で、袖が浦やキリン団扇などに接ぎ木すると旺盛に育つので、台木を残してカットし(いわゆる台降ろし)、台木の根で育てるやり方が普及しています。この方法でも、見た目はあまり変わらないので、手軽に育てるなら台降ろしが良いでしょう。




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  grown from seed, 20year on its own root.
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 かつてエリオシケ属は、この五百津玉を含む極光丸(Eriosyce aurata 'ceratistes')系統の大型種のみのグループでした。極光グループには、刺の太さや数、色合いなどで色々なタイプが存在し、牙のような黒刺が魅力的な五百津玉は一番人気でした。他に美しくて人気があったのが、麦色の細刺を密生するサンディロン(Eriosyce aurata 'sandillon')、別属にされていたこともあるローデンティオフィラ(Eriosyce rodentiophila)などです。産地ごとに微妙に顔が違うので、いろいろな人が勝手に名前をつけたために、認められていない名前が両手に余るほどあるのですが、それらはいまはまとめられて、アウラータとローデンティオフィラの二つだけになっています。その結果、馴染み深い五百津玉の名も分類学的には消滅した形です。
 また、同じ時期に、チリ産カクタスの多くの属、たとえばネオポルテリア(Neoporteria)、ホリドカクタス(Horridocactus)、ネオチレニア(Neochilenia)、テロセファラ(Thelocephala)などが、エリオシケ属に併合されました。このため、エリオシケ属には、樽のように巨大に育つ極光丸系の種から、親指サイズの塊根種まで、実に多様な顔ぶれが揃うことになりました。しかし、エリオシケと言えば、いまもこの五百津や極光のことだと思っているマニアも多くいます。




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 さて、我が家の一点モノの五百津玉。ご覧のように植え替えを当面しないですむように、大きめの鉢に植えこんでいます。植え込みで、センターが出ていないのは、地中で曲がり、枝分かれした硬い根を傷めないため。成長期は早春~初夏。気が向くと初冬にも動くことがありますが、あとはほぼ寝ています。今年も3月中ごろから美しい新刺を伸ばしましたが、もう休眠入りしています。刺の出てこない時期は水をやりません。このまま、開花してくれる日を目標に、焦らず向き合っていくつもりです。









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プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。著書:
「珍奇植物 ビザールプランツと生きる」
(日本文芸社)
「多肉植物サボテン語辞典」
(主婦の友社)

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