FC2ブログ

沙漠のバラ (Adenium obesum)

  
 アデニウム・オベスム(Adenium obesum)は、熱帯アフリカの乾燥地に分布するキョウチクトウ科の灌木で、美しい花を咲かせることから「沙漠のバラ(Desert rose)」の愛称があります。塊茎植物として人気のパキポディウム属(Pachypodium)とも近縁ですが、花だけとってみれば、アデニウムの方が華やかです。でも、ちょっと多肉に詳しくなった人から見ると、オベスムはタイあたりで園芸的な改良がすすんだ熱帯花木、あるいは人為的に盆栽づくりされた入門者向けコーデックスに思えるかも知れません。




resize2210.jpg
   Adenium obesum at nursery in thailand



 むしろアデニウムといえば、ソマレンセ(A.obesum ssp.somalense)やソトコラナム(=A.obesum)などが高級コーデックスとして人気がありますが、実はこれらもオベスムの亜種や、シノニム(同じもの)と考えられています。そもそも、オベスムの分布範囲はきわめて広大で、マリやセネガルといった中部アフリカから、東へスーダン、ソマリア、エチオピア、ケニア…。中東方面ではソトコラ島を含むイエメン、オマーン、サウジアラビア…。と、まあ熱帯アフリカのほぼ全域をカバーしています。そのなかで、顕著な特徴を持ついくつかに愛称や亜種名が与えられているわけです。
 形態的にもさまざまで、根部ばかりが肥大し地上部は細い枝だけの型から、高さ数メートルのバオバブ型のボトルツリー(ソトコラナム)に育つものまでじつに様々です。しかし、多肉園芸界では、「オベスム」というといわゆるタイなどで作られた園芸花物としてのオベスムに限られてしまう傾向があるのです。じつにもったいない。今日ご紹介するのは、それとは異なるワイルドなタイプです。




resize2219.jpg

resize2213_20210606150421ba2.jpg
   Adenium obesum in full blooming. wild form from Kenya




 先日、満開になった我が家のオベスム。溜息が漏れるほどの素晴らしい花だと思いませんか。白と濃ピンクの中輪、少しフリルがはいった花が鈴なりに咲いています。これが、人の手の加わっていない、野生そのものの植物の開花なのです。ほとんど葉が出ていない状態で花だけがビッシリと咲くので、ソメイヨシノの開花にも通じる神秘的な印象もあります。室内にかざって、一週間ばかり、家族で花見を楽しみました。
 この株の由来を言うと、数年前にケニアの知人にアデニアを送ってもらった際に、一緒に送られてきた株です。ナイロビから、アデニアのエリアに行く途中に沢山生えているんだそうです。掘られたばかりのようで、赤土だらけ、スコップ傷もついていました。いま鉢の上に出ている徳利状に膨らんだ部分はほとんどが地中塊根で、地表部は細枝がブッシュのように茂るタイプのようです。




resize2214_2021060615050810a.jpg

resize2216.jpg

resize2215.jpg

resize2209.jpg




 最初の数年は、塊根表皮が土の色でオレンジがかってみえて、それはそれで美しかったのですが、うちでは夏場雨ざらし栽培をしていることもあって、土の色は次第に流れ落ちていまの肌色に。いま、ちょうど花が終わって葉が萌えてきたところですが、ソマレンセなどの葉よりも幅広で、ワックスを塗ったような艶があり、葉脈が美しく浮かび上がります。花だけでなく葉も美しい。フォルムの面白さではパキポには譲りますが、トータルな魅力では決して劣らないと思います。先にも書いたように、タイのオベスムと名前では区別がつかず、ブランド化していないこともあって、このワイルド・オベスム、市場では案外見かけません。業者さんも積極的に輸入していないようなので、大事に育てたいと思います。栽培ですが、暑い時期にはとても元気で、梅雨の間も雨ざらしです。一方で、とにかく寒さに弱いので、冬も最低温度10度くらいをなんとか保って(もちろん、水は切る)維持しています。本来は乾燥で葉を篩う植物なので、冬の寒さで落葉するのはかなりこたえるはずですが、毎春素晴らしい花で楽しませてくれています。





















テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

ロビビアは南米高山難物種か?

 

 例年よりかなり早い梅雨入り。日照が足りなくなるし、温度もあがらずじめじめ。乾燥地の植物たちにとってはあまりありがたくありません。週末、5月に咲くものが多いロビビアの花の写真を慌てて何枚か撮りました。原種のロビを集めたくて、今世紀の初めごろに沢山蒔いたのですが、あまり残っていない。ある意味、難物サボテンとも言えます。




resize2171.jpg

resize2173.jpg
   Lobivia pentlandii 'hardeniana' R298 Potosi,Bolivia (Syn: Echinopsis pentlandii)



 青玉、または艶槍丸、という名前がついています。Lobivia pentlandii 'hardeniana'(R298 Potosi,Bolivia)。Walter Rausch氏のフィールドナンバーがついているので、比較的古くから栽培されていると思われます。写真の株は、花こそ綺麗に咲きましたが、植物本体の色が黄色っぽくなっています。数年前までは濃い緑色でもっと長い刺が出ていました。5年くらい植え替えていないので、土が古くなって肥料切れを起こしているようです。ロビは代謝が盛んなので、2、3年植え替えないだけで調子が悪くなりますね。この種もそうですが、大きな塊根が育つので、深鉢が必要なのも世話が焼けます。




resize2178.jpg

resize2180.jpg
   Lobivia saltensis ssp.zapallarensis WR16 (syn.Echinopsosi saltensis)
resize2179.jpg
   Lobivia arachnacantha ssp.torrecillasensis MC5060 (syn.Echinopsosi arachnacantha)



 赤いロビが2種類咲いています。左側は Lobivia arachnacantha ssp.torrecillasensis(MC5060 Torrecillas, Santa Cruz, Bolivia)。虹光丸、紅光丸などの名前もありますが、アラクナカンサという名前の方が親しまれているかも。右側は Lobivia saltensis ssp.zapallarensis(WR16 Salta,Argentina)。どちらも小型の刺が強くないロビで、おそらく石ころの隙間などに草や地衣類と一緒に埋もれるように生えている類です。こちらも植え替えしていないので、かなりストレスを受けた状態。がんばって咲いてくれたので、植え替えてやらないと。




resize2187.jpg

resize2191.jpg
   Lobivia jajoiana v.paucicostata R217 (syn.Echinopsosi jajoiana)




 最後はロビでいちばん有名なもののひとつ、紅傘丸ことフフイアナ(ヤヨイアナ)の青肌タイプ(Lobivia jajoiana ssp.paucicostata R217 Jujuy,Argentina)。大輪の花は花底部が黒く染まり、同色の雄蕊とともにとても印象的な花です。基本は赤花ですが、黄色やオレンジ、ピンクのタイプもあり、昭和の花サボテンの大家、伊藤芳夫さんも本種を交配親に多数の美花サボテンを作出しました。栽培にはクセがあり、湿度が高いと芯が止まったり肌が汚れたりしやすく、頻回の植え替えに加え、強い日射と通風が必要です。拗れないように順調に育てないと枯れたり、見苦しい姿になってしまいます。




resize2172.jpg




 ロビビアの多くは、アンデスの標高3000m以上の岩山や草地に生えていて、強い紫外線といつも風が吹いている環境を好みます。北米高山種と言われる難物サボ、スクレロやペディオよりもずっと高地に生えているわけです。むしっとしたハウスで耐えてくれるのが不思議なくらいで、ちょっとしたはずみで調子を崩しやすい。そして成長が早いので、頻繁に植え替えたりカキ子したり、形を整える作業も必要です。かつての花サボテンブームのときも、伊藤名人が推奨したこともあって、基本は接ぎ木して育てる人が多かった。しかし、本種の魅力は花だけではなく、様々な表情を見せる刺や、太い塊根に支えられ地面に蹲るような草姿そのものにあります。まさに、アンデスの高山植物で、そういう意味では焼き鉢に石くれなどをあしらいつつ、正木で育てたい植物。毎年、花を見るたびに、よししっかりメンテするぞ、と心を入れ替えるのですが…。












テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

今年もコピアポアを蒔く理由。

  
 連休は言いつけどおり何処にも出かけませんでしたが、恒例の種蒔きの儀式を執り行いました。ステイホームそのものです。春先に大事な植物を温室天窓の故障でかなりダメしてしまったので、取り返す意味でもしっかり沢山蒔くことに。といっても、事故の前に発注してあったものなので、ダメにしたペディオ・スクレロではなく、南米カクタスを中心におよそ200種(同種・別ナンバー含む)ほどです。




resize2149_202105051825297b2.jpg

resize2148.jpg




 さて、今年の種蒔きの主力はコピアポアです。コピと言えば、ISIJの会報やSNSでも流れているのでご存じの方も多いと思いますが、イタリアで、国際的な野生サボテン窃盗団が「アタカマ作戦」という名の越境捜査によって検挙されました。盗堀品の大半が自生地のアタカマ沙漠から持ち去られたコピアポアで、他にもメキシコ産のアリオカルプスやアズテキウム、ゲオヒントニアなどサイテスⅠ類植物も含まれていました。自生地で違法採取された植物は主に日本や中国などのアジアに送られ、億単位の額になったとみられています。イタリアを経由することで、多くの場合“栽培品”として再輸出されるため、買い手側は悪気なく入手しているケースも多いと思います。今回、捜査機関はイタリアの栽培業者の温室も家宅捜索し、“現地球”千本あまりを押収しました。コピアポアはチリの自生地に戻されましたが、いったん抜いた山木を過酷なアタカマ沙漠に戻しても活着は望み薄です。そしてこういうことが起きると、純粋に植物を見るためだけに自生地を訪れることや、種子の流通まで規制されるなど、色々と悪い影響が出そうで心配です。




resize2090.jpg
 【参考記事】 IUCN “Operación Atacama”
resize2091.jpg
 【参考動画】 Millonario contrabando de cactus chilenos a Italia




 実際、いまインスタなどをみても、コピアポアの山木をアップしている欧米人はほとんどいません。のんきな人がたまに“現地球”をアップして、意識の高い人に発見されると、「自生地から盗んだ!」「泥棒!」などとコメント欄がプチ炎上状態になっています。野生コピがたまらなく魅力的なことは百も承知ですが、今後は入手はおろか、だんだん品評会に出すのも憚られるようになっていくのではないでしょうか。私も十年前くらいまで、KKさんから“サイテスつき”の山木を輸入して大切に栽培していますが、これから先の入手はもう無理でしょう。というか、この十年で大きくカルチャーが変わり、セクハラにパワハラ、人前での喫煙が “ありえないこと” になったのと同じように、稀少な野生植物の採集は社会的に容認されなくなってきています。自然環境への配慮がこれだけ語られるなか、今後は時代の要請としてちゃんと適応しなければ…と思っています。




resize2107.jpg

resize2112.jpg




 というわけで、話が横道にそれてしまいましたが、そんな時代だからこそ、種蒔きに精を出そうというわけです。種子から二十年かけても、10センチにもならないコピアポア。でも、時間を惜しまなければ、山木に負けない風格を出すことも不可能ではありません。うちには既に10年20年選手の実生コピアポアがありますが、それなりに素晴らしい姿になってきました。今年はコピだけで50種(もちろん種子。産地違い含めて)くらいを入手しています。コピの輸入種子は必ずしも発芽率が高くないので、どの程度生えてくれるかは蒔いてみないとわかりませんが、いくつかピックアップして、“楽しみどころ”を紹介してみます。


Cop.cinerea tenebrosa KKHK1494 Cerro Mont Perrales 1050m

テネブロサ、は分類学上は逆鱗玉に含まれます。タルタルの山の上の方にだけ生えるタイプで、同居する黒王丸の血が入っているともいわれます。この名前で蒔いた種子からは、だいたい黒王に近い顔のものが出る。いわゆるinermis(刺なし)フォームの黒王も、このテネブロサタイプです。今回はどんな顔が出るか。

Cop.haseltoniana mountainform (black sp) JN1320 Antofagasta 510m

山の中腹あたりの黒刺逆鱗。でも黒王とは違って針のように細い黒刺が出るタイプだと想像しています。逆鱗は海辺から山の上まで分布範囲が広く、実に色々なタイプがあって面白い。海沿いのコロニーは車で道から見られるので、ウェブに写真もたくさんありますが、山上コロニーの資料写真はあまりない。山上タイプは黒王と同じくらい白くなりますが。栽培下では再現しにくいです。

Cop.eremophyla 'modra epidermis' JN855 Caleta El Cobre 50m

エレモフィラも逆鱗に含まれます。こちらは海岸沿い、しかもEl Cobreとあるので、北限のタイプ。modra epiderumis と説明があって、おそらくチェコの青が美しい陶器のことだと思います。なんとなくこの言葉に惹かれて買ってしまいましたが、あまり白くならないってことですね、きっと。でもミントグリーンの逆鱗もとても美しいです。

Cop.decorticans RCP_68 Quebrada Botija

コピ最稀少種。自生地の個体数も少なく、山木も含めて栽培されている株を見たことがありません。最近、種子が出回るようになり、一昨年も蒔きました。いまのところ本物だと思っているのですが、今回、別のソースの種子も蒔いてみて、比較検討してみようと思います。短めの刺がビッシリ稜に連なる、なんとも不愛想なコピアポアです。

Cop.mollicula PH_269.02 Nord aero P Chanaral

これも、栽培下に確かな本物が少ない種。私のところにもこの名前で蒔いたものが複数ありますが、確信がない。そもそもが、チャニャラル空港の裏山(といっても海辺の山で標高800mくらいある)の上の方にしか生えておらず、ネットにも画像が少ない。いちばん確かなのは、シュルツ氏の書籍に出ている標本株で、扁平で刺はわりと強く、ちょっと太平丸みたいな顔をしています。シュルツ氏は「ハードボディのコピだ」と書いており、近くに生えているフミリスとはそこが違う。今回はまさに、空港の山の種子、と書いてあることに期待して播種。

Cop.fusca JN1985 La Cruz 262m

2016年に記載されたばかりの新種コピアポア。アタカマ沙漠の南の方からは、近年次々と新種が記載されています。日本でもなぜか人気があるグリセオビオラセア(C.griseoviolacea)をはじめ、数多あるコキンバナ/エキノイデス系統の1タイプと考えるのが妥当で、将来的には統合されるのではないかと思います。園芸的には、渋い肌をいかつい刺で武装するなかなかの面構えです。今回はほかに同系統の新記載種バデリ(C.baderi n.n.)も蒔きました。


 コピアポアの分類や同定はわりと難しく、自生地を歩いていても、これはなんだ??というもの(多くは自然雑種)が結構あります。日本で流通しているコピアポアを見ていると、正直、種名はかなりデタラメです。ヤフオクなんかみてても、これはどう考えても○○じゃないだろう、というものが、平気で○○として売られていたり。できるだけ信頼できるソースの種子を蒔いて、それでもミスや不作為の交配などで、違う植物が生えることもあるので、各種の特徴を識別できる眼力も求められます。これまでの経験では、1~2割くらいは違うものが生えました。生えないものもあるから、歩留まりは半分といったところ。今回、探しても見つけられなかったものがひとつあって、属中唯一の曲長刺の新種、スペルバ(C.superba)です。もしどなたか、種子をみつけたらぜひ譲ってください。でもまあ、それ以外はほぼコンプリートといったところです。




resize2115.jpg

resize2135.jpg




 毎年紹介していますが、私の実生法はとてもシンプル。プラの角鉢に通常培養土を5分、残り3分(表土)は市販の「種まきの土」を入れて、たっぷり潅水すれば準備完了です。「種まきの土」は、ピートモス粉末が中心で、目詰まりしないようパーライトなどが混ざっています。肥料分も多少入っているらしい。赤玉微粒だと根が這ってしまうものも、この土は繊維質なので根がよく絡みます。まあ蒔いて2年くらいはこれでいける。以前は種子を薬剤で消毒したり、土に熱湯をかけたり、といった作業もしていましたが、最近は省略。蒔いた後「ホーマイ」を散布すれば、カビやコケを一定程度防ぐことができます。




resize2121.jpg

resize2125.jpg

resize2126.jpg

resize2118.jpg




 上の写真は去年蒔きのサボたちの現状です。ごらんのとおり何でもありの蒔き放題。もっとうまく育てれば、この倍のサイズにはなっているはずですが、粗放栽培なのでまだこんな感じ。去年もコピやエリオシケはけっこう蒔きました。かわったところで兜の野生型とか、軒下サボの代表格・金晃丸のフィールドデータつき、なんてのもあります。秋に何本かキリン接ぎしたコピアポアは、既に特徴が表れてきました。正木で育てれば、しっかり顔が出るまで10年はかかります。その頃もまだ、コピは人気があるのかな。













テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。著書:
「珍奇植物 ビザールプランツと生きる」
(日本文芸社)
「多肉植物サボテン語辞典」
(主婦の友社)

最新記事
全記事表示を読む

全ての記事を表示する

カテゴリ
月別アーカイブ
Google自動翻訳
自動WEBサイト翻訳(多言語)
最新コメント
最新トラックバック
リンク
カレンダー
05 | 2021/06 | 07
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 - - -
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
QRコード
QRコード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる