種まきの記 2017

     
種まきしようぜ、で毎度おなじみの当ブログ、ことしの実生報告がまだでした。
季節は夏の真ん中、春に蒔いた植物たちはいまどうなっているか。
近頃のブームにのってみて、サボテンよりも多肉・塊根系の種子を多めに蒔きましたが、
順調に育って楽しませてくれるものがある一方、不慣れな種など管理不行き届きで
ダメにしてしまったものも。




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今年播種したパキポディウムは、ブレビカウレ、エブレネウム、グラキリウス、バロニー・ウインゾリ、マカイエンセ
(Pachypodium brevicaule, eburneum, gracilius, baronii windsorii, makayense)どれがどれかわかる?
このほか、左側の葉の大きいものはケファロペンダンドラ・エキルホサ(left;Cephalopentandra ecirrhosa
いちばん手前の立木状のものがプテロディスカス・アウランチャクス(left front:Pterodiscus aurantiacus

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                 バロニー・ウインゾリ Pachypodium baronii ssp.windsorii 3months
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                 ブレビカウレ Pachypodium brevicaule 3months



そんななか、毎年蒔いて勝手もわかっているパキポディウムは、自家採種で発芽もよく、
管理も慣れているので順調に育っています。5月蒔きなのでちょうど3か月でこんなサイズ感。
すでに腰水からは引き上げて、40%遮光下での通常管理。1年間は温室内で穏やかに
過ごしてもらいます。本当はこのタイミングで植え替えると良いのでしょうが、手がまわらないので
野菜みたいな密植状態のまま、1年間過ごしてもらいます。




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                 ユーフォルビア・シンメトリカ Euphorbia symmetrica 3months
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                 フーディア・ゴルドニー  Hoodia gordoni   3months



ユーフォルビアは、バリダやシンメトリカなど自家採取の種子が中心。
発芽もよく、元気に育ちます。ガガイモ科のフーディアは大輪のゴルドニーを蒔きました。
ユーフォもガガイモも色々蒔きたいけれど、一般的な種子業者ではなかなか見つからない。
そもそも、サボテンと違って多肉は全般に種子の入手が難しく、みつけても値段が高い。
そこが実生がひろがらない理由にもなっている気がします。




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写真左手前から時計回りに Ibervillea tenuisecta, Chorisia speciosa, Bursera hindsiana, Commiphora kua 'Gof Choba'
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               唯一発芽したコミフォラ Commiphora kua 'Gof Choba'
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                 オペルクリカリア・パキプス Operculicarya pachypus 3months from seed



灌木系のコーデックスは、イドリアやブルセラなどは順調に発芽しましたが、その後の
管理が悪く、全滅させてしまった種が多数。暑がらせたり、水切れさせたのが敗因です。
勤め人ゆえ、忙しいときは1週間温室が覗けないこともあり、このあたりなかなか辛い。
また、コミフォラやキフォステンマなどの買った種子は芽が出ないものが多かった。
オペルクリカリア・パキプスは自家採種で、去年採った種子と、今年採取した種子と
あわせて30粒くらい蒔いて、発芽は今のところ5本です。発芽しさえすれば丈夫なので、
半世紀後くらいには立派なコーデックスが楽しめるかと思います。

さて、種まきは結果が出るのに時間がかかる、という話ばかりすると、やってみようと
いう人がいなくなるといけないので、たった1年でもこうなります、というのが以下の写真。




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               ユーフォルビア・ゴルゴニス Euphorbia gorgonis 1 year from seed
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              プセウドリトス・エイレンシス Pseudolithos eylensis 1year from seed
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               パキポディウム・グラキリウス Pachypodium gracilius 1year from seed



ユーフォ・ゴルゴニスはすでにタコものらしい姿に育って、開花もはじめました。
ユーフォルビアはサボテンと似てますが、成長はずっと早いものが多い。
ガガイモ・プセウドリトスはまだ1cmくらいですが、肌の感じなど、いい感じになってきた。
そしてグラキリスの小さな森。パキポは、すでに屋外管理になっていますが、夏の終わりから
株の下方が太りはじめて、お馴染みのボトルシェイプへと移行していきます。

気が短い人のために言うと、1年経てば、種類にもよるけれど、小さいながら本来の風格が
備わってきて、ナミビアかマダガスカルか、小さな沙漠の風景が眼前に広がります。
ひと粒の種から生まれ広がった小宇宙にひたる・・・園芸家冥利につきる瞬間です。













テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

ピグマエオケレウス・ビーブリー Pygmaeocereus bieblii


このサボテンは夜、花ひらく。
端然とした植物の佇まいと、闇夜に朧に浮かぶ白い花には、幽玄な趣があります。




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               Pygmaeocereus bieblii Rio Santa Valley, Ancash, Peru



ピグマエオケレウス・ビーブリー。
(Pygmaeocereus bieblii Rio Santa Valley, Ancash, Peru)
2006年に正式記載された、まだ新種の部類ですが、南米の小型サボテンのなかで
もっとも鑑賞価値の高いものの一つでしょう。トリコケレウスに連なるグループで、
南米の柱サボテン類のなかで、もっとも矮小な形に適応を遂げたものですね。




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               Pygmaeocereus bieblii plants from Karel Knize



さて、こちらは昼間の姿。
象牙色の極く短い刺が球体を飾り、丁寧に編まれた籠のような姿のサボテンです。
北米原産のペディオカクタス飛鳥・斑鳩(Pediocactus peeblesianus)を
思い起こさせますが、実際の自生環境や生態も飛鳥・斑鳩に通じる処があります。
故郷は北米ではなく、南米ペルー中部の高原地帯。乾燥した緩斜面で石くれに
埋もれるように生えており、休眠期には太い塊根で球体を地中に引き込むので、
地上からは見えなくなります。




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上3枚の写真の植物は、10年ほど前にペルーの業者からコピアポアを取り寄せた際に、
「新種で、コピよりずっと価値のある植物があるぞ」、と送ってきたものですが、
当時はまだ種も出回っておらず、開封したときは小躍りするほど嬉しかった。
物好きな人に何万でも出すから分けてくれと言われても断ったくらいです。
球形は3cm足らずの極く小型種で、時には本体の数倍に及ぶ塊根があります。
この株はおそらく山木ですが、仔を吹いたくらいで、当時植えた鉢のまま殆ど
球径は増していません。




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花は夜咲きの大輪。この球体サイズにしては・・・という意味ですが、花首が細く繊細。
じつはこの株は上の輸入株ではなく、その種から育てた2世です。こちらはすでに
直径6cmくらいに育っていて、いわゆるトビ苗。同期の大半は3、4cmで止まってます。
栽培するうえでは、塊根があるので、過湿にならないように多少気をつかっていますが、
飛鳥・斑鳩ほど気難しくないし、暑さ寒さにも強く、育てにくいサボテンではありません。




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魅力はやっぱりこの極短の刺。長さや生え方に微妙な違いがあって、顔違いも楽しめます。
白く短く、星の砂をくっつけたみたいな感じは、ほかのどのサボテンの刺にもない魅力があります。
亜種としてクエハシー(P.bieblii ssp.kuehhasii)がありますが、こちらは球体のサイズが大きく、
刺も荒く、観賞植物としては基本種に分がありそうです(あくまで好みの問題ですが)。
また、ピグマエオケレウスには、このほかにも小型で精密な美しさを感じさせるサボテンが
いくつかあり、あまり知られていませんが、どれも栽培する価値のあるものばかりです。

南米の夜咲小型種としてば、ディスコカクタス・ホルスティ(Discocactus horstii)が
長年、最大の人気を誇ってきましたが、このビーブリーは強力なライバルになりそうです。








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光堂、種の収穫。


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              Pachypodium namaquanum ripening fruits fulfilled with seeds



    
桜の花の咲くころに開花し授粉した、パキポディウム・光堂(Pachypodium namaquanum)。
過去何年間も幾度も挑戦して実ることがなかった自家採種に、ついに成功したようです。
梅雨のさなかの7月初旬、稔った種子を収穫することができました。




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               hand pollinating with cat whisker



蕾が出たのは去年の暮れ、それでもって満開を迎えたのが3か月後の3月下旬。時間がかかりました。
2株の光堂に全部で100近いたくさんの花が咲いて、とにかく片っ端から授粉を試みました。
新兵器の猫の髭?授粉筆に、これまでと同じ各種の釣り糸、さらに細く裂いた竹ヒゴと、
実に様々な道具を繰り出して、細い花筒のなかに突っ込んでは、別の花筒にまた突っ込む、
という作業を繰り返したわけです。




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で、結実したのは、一株だけで、それもたったの4鞘です。どういう時にうまく授粉出来て、
どういう時にうまくいかなかったのか判りません。同じような作業はこれまでもやっていましたが、
これほど沢山の花で根気よく作業したことはなかったので、単に低い確率の作業に数で挑んで結果が
出ただけかも知れません。でもまあ、かなり嬉しかった。

さて、果実が膨らみ始めてから収穫までも、また3か月かかりました。
この間、光堂はいちど完全に落葉し、休眠期に入ります。なので、水も切る。すると目に見えて
果実の肥大も遅くなる。でも、自生地も雨はふらんのだろうから、という解釈で灌水はがまん。
弾けて種が飛散しないようにストッキングをかぶせてひたすら待つ(最近は鞘にはストローを
かぶせることが多いのでですが、光堂の果実は太すぎて入りません)。
やがて、6月中旬になると新葉があらわれます。果実の方はかなり黄色っぽくなってきますが、
乾いた感じにはならない。そのうち梅雨なので、カビみたいなもので端っこが黒ずんできます。
そのうちひと鞘は完全に黒くなり駄目になってしまいました。




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             I got 100 seeds from 3 capsules, 3 months after flowering



これはヤバイな、と思ってよく見ると、果実はすでに裂け目を生じて、なかには種が見えています。
どうやら光堂は、ほかのパキポのように鞘が乾いて裂ける(種がはじけ飛ぶ)のではなく、
まだ瑞々しさを残したまま、種が成熟するようです。種は羽毛のついた細長い軽い種子で、
マダガスカルパキポと感じは一緒。ただ、多少サイズが大きく、色は黄色みの少ない灰色です。
4つの果実から100粒近く収穫出来ましたが、半分くらいの種子がカビの影響で黒ってぽくなっている。
完全にカビている種子も20粒くらい。果実の裂開にもう少し早目に気づけば良かったと少し後悔。
見た感じシイナには見えませんが、カビの影響も含めて、発芽能力はどうなのか。秋に蒔くつもりです。
そして、種を採った親株はすでに新葉をめいっぱい展開して、真夏の陽ざしを受けギラギラと全開モード。
光堂の1年は、こんな感じです。




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さて、ここから先は蛇足。

私はかねてから、植物は自家で開花結実させ、その種を再び開花させるまでをひとつのサイクルとして、
それが出来たときにはじめて、栽培に成功したと言うことが出来ると考えています。
そもそも、種から育てられない植物は、いくら立派な山木を手に入れても良い状態を維持することは困難で、
どんな環境が適するのかを知るためにも種からの育成が近道なのです。
光堂について言えば、規制が厳しく山採りが困難なため、流通しているのはほぼ実生育成苗だと思いますが、
栽培下で開花させ種をとり育成する技術を持つ人がそこそこ存在するから、市場に出回るということかなと。

一方で、このところのマダガスカル産パキポディウム(とくにグラキリウス)の輸入については、
お国柄か保護施策が不十分なことに乗じて、10cmに満たない若い苗まで根こそぎ採取されていることに、
痛みを感じざるを得ません。なぜなら、グラキリウスはじめマダガスカルのパキポディウムは、
栽培下での開花結実、実生からの育成が容易で、10cm程度の株は種から5、6年で育成可能だからです。
未来世代を担う若苗くらい、自生地の野山に残してほしいと願うのは綺麗事でしょうか。
そして趣味家の側に視点をうつせば、実生苗を手に入れて育成できない環境であれば、形の良い輸入株を
手にしても、数シーズンでダメにしてしまうことは避けられないでしょう。

まあ、倫理観の押しつけとか、原理主義的な環境保護運動なんかは、そもそも苦手なたちなので、
こういうことを書いていても、なんとなく居心地が悪い。でも、今の勢いで野生植物を輸入し続けることは、
少なくとも持続可能ではない。だから今後は、国内の多肉業界でも、ブローカー的な売り屋さんだけなく、
車の両輪として、技術を磨いて栽培育成もあわせておこなうプロの登場にも期待したいところです。

















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沙漠植物、栽培、探究。

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