冬を越える。

   
数日前から、アデニア・グロボーサ(Adenia globosa)が花を咲かせています。
こんな季節に?と思うかもしれませんが、ほぼ赤道直下にあるこの植物の故郷には冬はありません。
置いてあるのは、朝の6時から夜中の2時まで誰かが起きているリビングルームです。暖房がずっとついているか、
消しても数時間なので明け方も20度以下にならない。南向きの出窓なので、昼は日が差し込んで30度近くになります。
なかなか咲かないグロボーサですが、この環境なら本来の生育パターンを取り戻して開花するということ。
とはいえ、ここまでの環境をすべての植物に用意することは困難です。



 
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                    Adenia globosa flowering in February




サボテンにしても、コーデックスやメセンなどの多肉植物にしても、その多くは亜熱帯~熱帯の乾燥地帯から
やってきたものです。といっても、求める温度環境ニーズはさまざまで、それを1つや2つの温室やハウスで
管理しようというのだから、苦労するのも当然です。私の主な栽培場は、関東の山間部にあるビニールハウスで、
重油暖房のような装置は備えていません。なので、育てられる植物はかなり限られます。




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                  Agave,Yucca,and Aloe polyphylla in snow.




まず、最も寒さに強い植物群が、アガベ、ユッカ、オプンチアやケレウスなど一部のサボテンです。
1月に雪が降ったときは、外の棚に放置している植物は冠雪しました。アガベの大半は外でも越冬しますが、
傷んで見栄えが悪くなります。なのでおすすめはできませんが、場所がないので我慢してもらっている状態。
アロエでは圧倒的に強いのがポリフィラ(Aloe polyphylla)で、葉先が凍って透明になっても、株全体が
ダメになることはありません。
これまで、鬼切丸(A.marlothii)、木立アロエ(A.arborescens)、ディコトマ(A.dichotoma)など、
いろいろ越冬を試しましたが、ポリフィラ以外みな凍死しました。アロエは全般に寒さに弱いです。
エケベリアやクラッスラなどベンケイソウ科の多肉も、この場所では屋外越冬できるものはほとんどなし。




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              Yucca, Xanthorrhoea and Cereus repandus outside through the winter




ユッカ(Yucca)、ダシリリオン(Dasylirion)、グラスツリー(Xanthorrhoea)などは、地植えで越冬中。
これらは、地植えすることで成長速度が倍以上になるので、実生から育成するなら地植えは必須ともいえます。
オニソテツ類(Encephalartos)なども、大きくするのは最高の方法なのですが、貴重な植物なので、なかなか
踏み切れずにいます。サボテンでは鬼面角(Cereus repandus)は、各地でも地植えされていますが、
ここは越冬限界に近いようで、毎冬先端部分が寒さで溶けてしまいます。




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              cacti withstand well below freezing
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              left side (near outside of greenhouse) is colder than right side                




上の写真は無加温のビニールハウス内で、この2週間に記録した最低気温です。氷点下5度に下がった夜が、
少なくとも一度はあったことがわかります。ハウスの中の最低気温ですから、外はさらに冷え込んで、おそらく
氷点下7-8度くらいまで下がったでしょう。東京23区よりも緯度は南ですが、3-5度くらい気温が下がります。
住人は主にサボテンで、大半の種は持ちこたえますが、メロカクタスや森林性サボテンの一部は越冬出来ない。
また同じハウス内でも場所によって環境条件が異なるようで、エンセ・フェロックス(Encephalartos ferox)の
葉が片側だけ枯れているのは、ハウスの外縁に近い方が寒かったという証拠です。なので、寒さに弱い種は
なるべくハウスの真ん中に集めています。




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            winter growing succulents in unheated greenhouse




冬型植物のハウスも、これと同じ環境です。コノフィツム(Conophytum)、リトープス(Lithops)などは
本当に寒さに強く、氷点下7度になった時も被害ゼロでした。メセン類ではいわゆる草もの葉ものの中に弱いものが
多少あります。一見弱そうな、ユーフォルビアもオベサ(Euphorbia obesa)や多頭キリン(E.multiceps)など
南ア産の冬型種は耐寒性抜群で、氷点下の夜が続く厳冬期も成長しています。
ただし、外見が似ていても東アフリカ産のユーフォなどは一晩でダメになるので注意が必要。と思います。
エケベリア、ハオルチアなども寒さにはそこそこ強いですが、氷点下の夜が続くと葉傷みするので、不織布を
かぶせて少しでも寒さを和らげています。
サルコカウロン(Sarcocaulon)などの枝、ホネものは、寒さで葉っぱが全部落ちることがあり、次の秋に
なっても芽吹かないことがたまにある。この仲間の越冬ギリギリの気温は氷点下3度くらいにあるように思います。
なので、こちらも不織布をかぶせていますが、虐待しているようで申し訳ない気持ち。




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人気のコーデックス類は、多くが熱帯アフリカ原産なので、寒さはからきしダメです。
ケニア、ソマリア、マダガスカルなど、東アフリカの植物は最低温度10度を保ちたいので、ここでは厳しい。
アデニア(Adenia)、コミフォラ(Commiphora)、オペル(Operculicarya)などは
無理でしょう。パキポディウムも厳しいのですが、スペースの関係で、ここのハウス内にミニ温室を置き、
その中にサーモのついた電気温風機を設置(1坪=1000W)しています。このハウス内ハウスで
最低気温3度をなんとかキープ。パキポディウムのなかでも、バロニーやブレビカウレはダメですが、
ロスラツム系はなんとか越冬します(ただし毎年数本は落ちる)。意外と寒さに弱いアロエ・ディコトマや、
ボンバックス、なども同じ場所で冬越しさせています。




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          caudiciform succulent from tropic Africa keep over 8°C.




私の場合、純熱帯産の多肉植物やコーデックスは、都内の加温設備のある小さいガラス温室ですし詰め状態で
越冬させます。加温設備といっても、冬の明け方は8度くらいを維持するのがやっとなので、ソマリアやケニアから
来た植物にとっては信じがたい寒さだと思います。たちまち葉を振るい落としてしまいます。乾燥ではなくて寒さで
葉が落ちるという状況は、休眠というと自然のサイクルみたいに響きますが、それは間違いで実際は「半殺し」の
めにあっているようなものでしょう。こういうストレスが蓄積し、何年ものあいだに衰弱していく植物もあります。
ドイツにあったコーデックスで有名なナーサリーは、巨大な温室を冬場15度以上に保っていたそうです。
どれくらい重油代がかかったか想像つかないですが、なかなか実現は難しい。




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花が咲いたアデニア・グロボーサは、室内のリビングにいるので冬も3週に一度は水をもらって成長を続けています。
ただ、一年じゅう室内では徒長してしまうでしょう。
あれこれの植物が、凍えるハウスで、すし詰めのガラス室で、人と同居のリビングで、もうそこまでやってきている
春を待っています。

(隔週日曜日に更新しています)












テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

霊験あらたかな石。

      
秋から春に色鮮やかな花で楽しませてくれるメセンの仲間。
今回はコノフィツムやリトープス以外からいくつかご覧いただければと思います。
いずれも花だけでなく、植物そのものも興味深い姿や生態のものばかりです。




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                 Titanopsis hugo-schlechteri M.1872.1 60 km NE Kliprand




チタノプシスの天女扇(Titanopsis hugo-schlechteri)は、擬態植物として有名です。ほぼ地平面に這うように
展開する厚肉の葉は、自生地の砂や石くれと同じ色調、パターンで、身を隠します。古くから作られているので、
ややもすると駄もの扱いする人もいますが、夏の過湿に弱いので、外葉を枯らさないように大きな株に仕立てるには
相応のテクニックが必要。夏型扱いする人もいますが、私は秋~春に育てています。寒さには大変強く、厳寒期に
つぎつぎと開花します。根は太くなるけれど、塊根として鑑賞するのは難しいかな。




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                 Mitrophyllum clivorum M.1779.39 Komaggas




ミトロフィルム、というメセン自体があまり知られていませんが、姿や生態がとても面白い植物です。
このクリボルム(Mitrophyllum clivorum)は、なかでは小型の部類。大型種は高さ50cmくらいまで育ちます。
成長期は写真のように赤茶色の幹(茎)の部分から、ゴムのように柔らかい葉を展開します。
春の終わりに柔らかい葉は枯れ、その年伸びた分の茎が残る。モニラリア(Monilaria)に近いグループなので
成長パターンもちょっと似ていますね。コーデックス的な味わいのあるメセンです。ユニークなのは、休眠期に
茎のてっぺんに翌年展開するための葉っぱがセットされる点で、これはかなりの奇態です。
なかなか言葉では説明しにくいので、興味あれば画像検索してみてください。
栽培は難しくありませんが葉の落ちた休眠期は完全断水。秋~春はたっぷり灌水。寒さは少し苦手。




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                 Didymaotus lapidiformis SB627  Ceres Karoo,South Cape




最後はムイリアと並ぶ難物、珍奇種と言うべきディディマオタス(Didymaotus lapidiformis)。
この属にはこれ一種しかなく、「霊石」というちょっと不気味な名前がついています。霊験あらたかな植物かどうかは
わかりませんが、世にも奇妙な植物であることは間違いない。対に展開した葉の間から、次の葉が覗いた状態、
このシンメトリーな姿が基本形です。そして、このメインの葉の両脇には、同じようなデザインの小さい“葉”が、
それぞれ生じます。さらにここから花茎を伸ばして、両手に捧げもつように金属光沢あるピンクの大輪をひらく。
写真の株は片側からしか咲いていませんが、両側から同時に開花すると、一層奇妙な感じになります。
花は株の中心ではなく、この両脇からしか咲かず、花のつけ根は実は葉ではないので分頭したりはしない。
国内栽培では緑色ですが、自生地の強光線のもとでは、錆びたような赤に色づき、大地と一体化します。
夏の灌水では腐りやすく、成長期も水は少なめに育てますが、言われてきたほど難物ではありません。
小さな鉢植えなのに、なんというか重たい存在感があって、実にカッコいい植物です。













テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
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春を告げるサボテン(ツルビニカルプス)

           
年があけて日が長くなりはじめ、ツルビニカルプスの花が咲くようになると、春が近づいてきたことを実感します。
ツルビニは、小さいのに風格があるし、花も美しい。場所もとらず、刺も痛くない。
性質も温和で親密な気持ちで向き合える植物です。




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                  Turbinicarpus valdezianus  P267 Saltillo,Coahuila




バラ丸(Turbinicarpus valdezianus)は、そもそも小さいツルビニのなかでも最も小さい種で、
球径は1~2cmくらいで、高さも数センチ。小指ほどのボディが鮮やかなピンクの冠で飾られる花時は最高です。
接ぎ木したりして大群生をつくる人もいますが、私の場合はあえて人間のスケール感に引き寄せることはせず、
本来のサイズ感で楽しんでいます。小さいサボテンにはよくあるパターンで、地中には、地上部分と同じかそれ以上の
塊根が発達します。けれど柔らかい根なので残念ながら地上に出すのには向いていません。また、太く長い根を
大事にする必要があるので、小さく浅い鉢では納まりが悪い。よって、鉢と植物(地上部)のバランスをとるためにも、
何本か寄せ植えすることになります。もしかしたら、石なんかを配しても面白いかも。




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                    Turbinicarpus hoferi  Aramberri, Nuevo León




菊水?と思った人もいるかも知れません。じっさいこの種が見つかった当初は、菊水の亜種ではないかとする人もいたくらい。
ホフェリ(Turbinicarpus hoferi)は、菊水ほどではありませんが、生育も遅く渋いあじわいのツルビニです。
もう少し大きくなると、同じツルビニの姣麗丸(Turbinicarpus lophophoroides)と似た雰囲気になってきます。
種も菊水(Strombocactus disciformis)とは異なり、実際には違う種であることは明らかですが、ストロンボカクタスじたい、
ツルビニと属間交雑が成り立つ近しい関係にあるので、他人のそら似とはちょっと違うかも知れません。
このホフェリ、導入された当時はとても人気がありましたが、最近はあまり見なくなりました。発見当初に自生地が荒らされ、
稀少になっているそうなので、栽培個体も種の保全をはかっていきたいところです。




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              Turbinicarpus schmiedickeanus ssp.andersonii Guadalcazar SLP




三つめは、これも比較的あたらしい種、アンダーソニー(Turbinicarpus schmiedickeanus ssp.andersonii)。
といっても、すでに導入から二十年以上経っているかな。いまでもメジャーなアロンソイとほぼ同時期に発見されて、
一時はこちらの方が稀少種として人気があったかも。導入当初は、みつけたイタリアのサボテン屋さんの名前から
パナロットイ(T.schmiedickeanus ssp panarottoi)と呼ばれていました。私は当時、イタリアのサボテン雑誌に
寄稿した返礼にその人由来の種をもらいました。なので、いまもうちの株にはパナロットイの名札が立っています。
基本種の昇竜丸に比べて、扁平な球体、端整な刺、ストライプの入る花。悪くないのですが、群生しにくいせいか、
徐々にマイナー種なっていったようです。

小さくても風格あるツルビニカルプス。都会の園芸にはぴったりだと思いますが、長くつきあっていて感じるのは、
寿命が比較的短いのではないか、ということ。種から2、3年で開花しますが、5年目くらいから大きさが変わらなく
なり、15年くらいするとなんとなく勢いがなくなってくる(老化?)。こうした傾向は、小型のサボテン全般にあります。
ツルビニは、花もよく咲き実生も容易なので、世代交代をはかるのがよいと思います。








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